おわりは嫌いだけれど、おわりを恐れてたら、新しい出会いも逃してしまう【キラキラ共和国】ー『本屋大賞特集第六回』―

様々なライターが、2018年・本屋大賞にノミネートされた10作品を紹介していく特集です。第6回は小川糸さんの「キラキラ共和国」です。

 

3月も中盤になり、今年度もそろそろ終わりに差し掛かる今日この頃。

 


ふと自分の読書体験を振り返ってみると、社会人になってから読んでいるのは、明日からの仕事に役に立つ実学書であったり、仕事のスキルが書いてあるビジネス書ばっかりになってしまっている、、、と気づきました。

 


学生の頃好きでたくさん読んでいた、『小説』をあまり読まなくなってしまっているな~と。

 


僕はもともと人との別れとか、物語の終わりとかがあると、とても悲しくなってしまう人間で、『おわり』がとっても苦手です。

 


好きなアニメの最終回や、好きなシリーズ小説の最終巻は読みたいけれども、読んだら終わってしまう悲しさが怖くて、でも読みたくて、けれどもやっぱり悲しくて、という、とても複雑な心持ちで作品に手を伸ばすことが多かったように思います。

 


そして現在は、自分でも意識しないうちに読書に求めるものが、
『知的好奇心を満たすこと』や『実用的な知識を得ること』になってしまって、
『純粋に物語を楽しむ』という体験のために小説を読むということが少なくなっていました。

 

 

そんな僕に今回の『本屋大賞作品を読んでレビューする』って企画は、とてもいい機会で、
『物語の持つ、人を豊かにする力』というものを改めて教えてもらえる。
そんな作品に出会うことができたと思っています。

 

 


今回、僕が読んだのは小川糸さんの『キラキラ共和国』です。
NHKでドラマになったので、ご存知の方も多いかと思いますが、この本は『ツバキ文具店』の続編になっています。

 

キラキラ共和国

キラキラ共和国

 

 
“鎌倉の山の麓にある、小さな古い文房具屋さん『ツバキ文具店』。店先では主人の鳩子が、手紙の代書を請け負います。”

 

 

読んでいて一貫して感じたのは、ほのぼのとした温かみのある世界観であること。
周りの人を大切にして、自然と共存しながら、一日一日を豊かに生きている家族の姿が描かれていて、最初から最後まで心があたたかくなりました。

 

 

登場人物に感情移入しすぎてしまって、この幸せな世界観を読み終えてしまうことにためらいながらも、
いい作品に出合えたという幸せと、まだまだ続編を読みたいという気持ちでページを進めるうちに物語は終わりました。

 

 

読み終えた後、本を閉じると、とてもやさしい気分になれます。
そして目を閉じてキラキラとつぶやく。
とても素敵な読書体験でした。

 

 

おわりは嫌いだけれど、おわりを恐れてたら、新しい出会いも逃すことになってしまう。
前作の『ツバキ文具店』も帰りに買って帰ろう。と思ったそんな今年度の終わりでした。 おしまい


(文/とみー)

過去の記事はこちら▼

hontopia.hatenablog.jp