三松文庫放浪記~菊池寛生誕130周年・没後70周年「足跡を辿る旅」編~

三松文庫放浪記の更新を初めて担当するということで、その重責に震えております。

こんにちは、三田です。

 

唐突ですが、今年はとある文豪にとっての節目の年なのですが、ご存知ですか?

 

 

そう、何を隠そうタイトルから丸わかりで恐縮ですが

あの菊池寛の生誕130周年であり、没後70周年なのです!

 

 

 

菊池寛。

作品にあまり馴染みがない方でも、名前くらい聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか?

 

香川県の出身の文学者で、直木賞、芥川賞の創設者でもあります。

小学校の道徳の教科書なんかで、短編を読まれたという方もいらっしゃるかもしれません。

 

とまぁ、偉そうに語ってしまいましたが、今回の旅に出るまで、三松文庫メンバーは菊池寛に対して、あいまいな知識しか持っておらず、作風や人柄に至っては、無知といっていい状態でした(笑)

 

 

香川県は三松文庫にとっても「海の見える一箱古本市」などでお世話になっているほか、メンバーが住んでいたこともあって、なにかと縁が深い県です。

 

 

ちょうど、高松市のサンクリスタル高松で

「菊池寛記念館第27回文学展 菊池寛生誕130周年・没後70周年記念 菊池寛を振り返る」

という企画展が開催されているということもあって、

この節目の年に菊池寛について知りたい!

と思い立ち、店主のあかまつくんと2人で菊池寛の足跡を辿る旅に出ました。

 

 

 

12月19日。

高松市にあるサンクリスタル高松に到着した三田とあかまつ。

 

サンクリスタル高松は、1階、2階に高松市立図書館、3階に菊池寛記念館、4階に高松市歴史資料館がある複合施設です。

 

f:id:hontopia:20181221225709j:plain

 

学生時代から、高松市立図書館にはよく足を運んでいたのですが、恥ずかしながら、三田もあかまつも3階、4階には足を運んだことがありませんでした…

 

 

館内に入った後は、まず常設展から。

3階の菊池寛記念館へ入ります。

f:id:hontopia:20181221225741j:plain

 

常設展内および企画展内は撮影NGとのことだったので、撮影オッケーの出た場所を撮影。

 

f:id:hontopia:20181221230229j:plain

 

常設展では、菊池寛の親族や親交のあった方々のインタビューなども盛り込んだ紹介映像のほか、その一生と人物像が資料とともに紹介されていました。

 

「父帰る」「藤十郎の恋」などといった映画化された代表作品についても、解説などが展示されており

初めて菊池寛を知る人でも一から学び・楽しめるような展示内容となっています。

 

また、菊池寛は直木賞・芥川賞の創設者ということもあって、館内には歴代直木賞・芥川賞受賞作およびその作家の解説も展示されているという豪華絢爛ぶりです。

 

4階で開催されていた企画展も、今回初公開となる菊池寛の生家・菊池家の古文書などが展示されており、見どころたっぷり。

 

f:id:hontopia:20181221230310j:plain

 

個人的には菊池寛が生前愛用していたというチェスターコートの分厚く暖かそうな見た目から着心地を想像するなどしても楽しめました(笑)

 

受付の方に少しおはなしを伺ってみると、企画展は盛況で、わざわざ遠方から来られる方も多いそう。

ちょうど「文豪とアルケミスト」というスマホゲームに菊池寛が登場し、菊池寛記念館とコラボしていることもあって、それをきっかけにして来館される方も多いんだとか。

 

f:id:hontopia:20181221230337j:plain

(「文豪とアルケミスト」に登場する菊池寛。足が長い)

 

 

大衆文学を志し、人に読まれる本を追求し続けた菊池寛。

あくまでも「人」にスポットを当て、掘り下げる姿勢に、ただ圧倒され

菊池寛のことが好きになった三田とあかまつでした。

菊池寛のように「人の感情を見抜く天才」とか呼ばれてみたい…!

 

 

 

サンクリスタル高松を後にした三松文庫は、先日の「滑川BOOK CAMP」のお手伝いをしてくれた後輩と合流。

香川県でいつもお世話になっている「吾里丸2」でうどんに舌鼓を打ちます。

 

菊池寛記念館で知識欲が満たされ、ごり丸でお腹も満たされた一行は

菊池寛ゆかりの地を巡るため、高松市が発行する「菊池寛ウォーク」の案内に沿って市内散策に。

 

 

 

百舌坂

百舌を捕まえる名手で、少年時代「百舌博士」と言われていた菊池寛が、百舌を捕まえていた場所ということで、名付けられた「百舌坂」

 

f:id:hontopia:20181221230704j:plain

 

残念ながら、百舌を見つけることはできませんでしたが

「いったいどうやって菊池少年は百舌を捕まえとったんやろうか」

「そういや、百舌って獲物を木の枝に突き刺すんやったな」

なんてことに思いを馳せながら、しばらくの間、坂を行き来する車をぼんやりと眺めました。

 

 

 

菊池寛生家跡

百舌を捕まえる菊池寛に思いを馳せた後は、菊池寛の名を冠する道「菊池寛通り」に向かいます。

 

f:id:hontopia:20181221231044j:plain

 

菊池寛は1888年(明治21年)12月26日に、香川県香川郡高松7番丁(現高松市天神前)で生まれたそうです。

 

残念ながら、その生家は残っておらず、今は駐車場になっていましたが、菊池寛の生家があったことを示す標識がありました。

 

f:id:hontopia:20181221231124j:plain

f:id:hontopia:20181221231154j:plain

(隣にあった「大黒天」)

 

 

 

菊池寛顕彰碑・菊池寛文学碑

生家跡の前の道を挟んで向かい側の中央公園内には、菊池寛顕彰碑と菊池寛文学碑が。

 

f:id:hontopia:20181221231337j:plain

f:id:hontopia:20181221231256j:plain

 

顕彰碑には菊池寛の座右の銘である

「不實心不成事 不虚心不事(実心ならざれば事成さず 虚心ならざれば事知らず)」

の文字が刻まれています。

 

誠実でなければ、事は成せない。

虚心坦懐にして、物事を理解できる。

 

だいたいこんな解釈で合っているでしょうか…(笑)

「うーん、深い」とひとしきり唸る三田とあかまつ

 

文学碑には代表作の1つ「父帰る」の作中の、百舌が登場する一部が刻まれており

ここにも百舌を見つけ、ほのぼのしました。

 

f:id:hontopia:20181221231529j:plain

 

 

 

菊池寛銅像

 同じく中央公園内には、菊池寛の銅像も立っていました。

 

f:id:hontopia:20181221231956j:plain

 

f:id:hontopia:20181221232021j:plain

 

 

 

「父帰る」像

「菊池寛通り」といえば、このブロンズ像とまで言える、代表的なスポットだと思います。

 

f:id:hontopia:20181221232456j:plain

 

f:id:hontopia:20181221232429j:plain


像は「父帰る」の一場面を表したもの。

数十年ぶりに帰宅したダメ父が再び出て行こうとする場面を像にしています。

次男の新次郎は父を引き止めようとし、妻・おたかと娘・おたねは泣くばかり。

長男の賢一郎は父を許せず、頑なな様子です。

 

賢一郎の握った拳から、愛憎入り混じった複雑な感情が読み取れるような気がしますね。

f:id:hontopia:20181221232539j:plain

(拳を握り正座する賢一郎)

 

 


とここで、あかまつくんが我慢ができなくなったのか

「菊池寛の本が欲しい」

と言い出したこともあって、休憩がてら、以前「海の見える一箱古本市」で、お隣に出店させていただいた「本屋ルヌガンガ」さんへ。

 

 

さっそく「本屋ルヌガンガ」さんで菊池寛の本の有無を尋ねると「ある」とのこと!

そそくさと購入するあかまつくん。

 

店主さんの話では、やはり定期的に菊池寛の本があるかどうか聞かれたりするのだとか。

 

そうしたお客さんの中には、僕たちのように「菊池寛ウォーク」からの流れで立ち寄った方もいらしたりするのかもしれませんね。

 

 

三松文庫といえばこれ。

というくらいにお馴染みの「アフタヌーン・ビール」

店内で、またまた昼間からビールをいただきます(※「本屋ルヌガンガ」さんにはカフェスペースがあって、コーヒー紅茶などのほか、お昼からビールもいただけるのです)。

 

各々、購入した本を片手にビールを飲む。

まさに至福の時間です。

 

f:id:hontopia:20181222023653j:plain

 

ちなみに、ぼくは来年1月23日に「本屋ルヌガンガ」さんで開催されるイベント

「『逝きし世の面影』読書会」の参加予約をちゃっかり行いました(笑)

今から楽しみです。

 

 

 

「本屋ルヌガンガ」さんを出たあとは、菊池寛ゆかりの浄願寺跡で狸の「はげさん」を見たり

同郷だと言って金を無心に来る相手に、菊池寛がこの天神の向きを尋ねたという

「華下天神」を見て回るなど、充実した「菊池寛ウォーク」を行いました。

 

 

今はもうないのですが

菊池寛が帰高のたびに、ギリギリの時間でも立ち寄り一品料理を頼んだという「料亭 大忠」

できれば、そんな菊池寛が愛した料亭に一度行ってみたかったなーなどということを唯一の心残りとする三松文庫一行なのでした。

(※「料亭 大忠」ではありませんが、この後、香川のおいしい料理とお酒をいただきました)

 

 

 

(写真・文/三田稔)