心から人を愛するために【愛するということ】

 今までの人生の中で、時折こんな疑問にぶつかったことがある。

 

 「愛するとはどういうことか」

 

ということである。

 

 

人間関係と幸福は、密接に関係している。社会という共同体の中で生きる上で、より親密な人間関係を築き、より幸福に充実した生活するために、必要なものが「愛」なのではないかと感じたのだ。

 

 

だが、私は、、、

 

「学校や家庭、職場、友人、恋愛・・・生活の中の様々な人間関係の中で、本当に私は人を愛することができているのか。」

 

「心から人を信頼しているわけではなく、見返りを求め、『愛されるために』打算的に人と接しているだけなのではないか。」

 

「うわべだけで『愛』という言葉を使っていて、一時的にその言葉に酔っているだけなのではないか。」

 

「本来の私は人を愛することができない冷たい人間で、『愛』や『愛する』といった気持ちや言葉を、心のどこかで冷めた目で見ている自分がいるのではないか。」

 


そんなふうに思うことがあるのだ。

それらのことでかなり悩み、そこで本書と出会った。

 

愛するということ 新訳版

愛するということ 新訳版

 

 

タイトルは「愛するということ」。

まさに私が知りたいことそのままだった。

愛するということについての理論を体系的に理解し、どうしたら心から人を愛することができるようになるのかというところを探求したかった。

 

 

読み進めていくうちに、このような文があった。

 

人は意識の上では、愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れているのである。

 

この文を読んだ時、息が詰まったのをよく覚えている。

私は「愛することができない」のではなく、「愛する」ことを恐れ、自ら避けていたのだ。

 

私は、安全と安定を望み、危険から自分を守ろうとしていた。私は動かず、ただ私の殻の中にとどまっていただけなのだ。

 

人間関係で傷つきたくない、苦痛を味わいたくない。

でも愛されたい。

 

私は大きな矛盾を抱えていたことに、気付かされた。

 

そして、さらに著者は「愛する」ことのあるべき姿勢をこう述べている。

 

愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。

 

 本書を読んで、一番よく分かったことといえば「愛するということの難しさ」に尽きる。

この文を読んでも、「愛するということ」が、とてつもなく高い高い壁に感じられる。

 

 

だが、そんな高い壁を私は認識し、自分から壁に手と足をかけ、登ろうとしている。

本書を読んで、「愛するということ」の本質を理解することはまだまだできていないだろうが、何か大きなものを得られたような気がした。

 

 

(文/ながっちゃん/学校教師)

『せとうちアート探訪 vol.1』 布と陶、フィンランドと砥部

 

はじめまして。たけうちひとみと申します。
普段は愛媛松山のとある場所でほそぼそ働きながら、趣味で本屋イベントの企画をしたり、アートイベントや子ども向けの舞台上演のお手伝いをしたり、、、あれこれしています。その繋がりで三松文庫ご一行と知り合いまして、hontopiaで記事も書かせていただくことになりました。

 

 

私に何が書けるだろう…と考えたのですが、本の紹介やイベントレポートは他の皆さん素敵な記事たくさん書かれているので、まだ記事が少なめの「アート」に関して、好き勝手書かせていただこうと思います。
美術館やギャラリーやアートプロジェクトや、自分が行ってみて良かった!と思うアートについて、ゆるーくご紹介できればと。美術の専門家でも何でもないのですが、記事を読んで、次の休日にちょっと行ってみようかなーと思っていただけたら嬉しいです。
とりあえず今のところは【せとうち】のアートスポットとその周辺案内、の予定です。

 よろしくお願いします!

 

 

今回は第1回ということで、まずは私の地元・松山で開催中の企画展をご紹介します。

 

『石本藤雄展 -マリメッコの花から陶の実へ-』 

石本 藤雄さん 
1941年愛媛県砥部町出身、フィンランド・ヘルシンキ在住。
1970年にフィンランドに移り、1974年から同国を代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」で32年に渡りテキスタイルデザイナーを務める。現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門の一員として陶芸制作に取り組む。カイ・フランク賞、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル、日本では旭日小綬章など多数。

 

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北欧デザインと聞いて、まず多くの人がイメージするのは「マリメッコ」のあの有名な花柄ではないでしょうか。しかし、「マリメッコ」には可愛い花柄以外にも、本当に多様な種類のテキスタイルがあるんです。


石本さんは、マリメッコに32年間在籍し、その間に400点を超えるテキスタイルデザインを生み出されました。何を隠そう北欧が好きすぎて卒業旅行でフィンランドに行った私としては、あのマリメッコの数少ない日本人デザイナーの石本さんが愛媛出身だなんて、初めて知った時はとても驚きました…!

 

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石本さんの作品の面白さは、そのデザインの幅広さにあると思います。
布のテキスタイルでも、花や果実などをモチーフとした温かな色合いのものから、クレヨンで少しずつ色味を変えた風景コレクション、シンプルなモノトーンの線画パターン、一見同じ人がデザインしたとは思えないような多様な作品が並びます。 

 

 

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原画やスケッチを見ることで、どのようにデザインを生み出してきたのか、そのアイデアの秘密も少し知ることができますよ。

 

 



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 テキスタイルデザインだけでなく、現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門に所属し、陶芸家としても数多くの作品を発表されている石本さん。
柔らかな布に対し、硬く冷たい陶器ですが、石本さんの作品はどれも色鮮やかで、瑞々しさも感じられます。 

 

今回は、石本さんの作品と愛媛県美術館の所蔵作品を、山や海といったテーマごとに展示した会場もあり、石本さんの思い描く世界観をあれこれ体感できる見ごたえのある展示空間となっています。

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私はせっかくなので、10月27日企画展初日に愛媛県美術館で行われた、石本さんご本人によるフロアレクチャーにも参加させていただきました。
石本さんを囲んで大人数でぞろぞろと作品を鑑賞する不思議な時間(笑)でしたが、マリメッコ在籍当時のお話や、一つ一つのデザインに込められた想いや制作秘話を直接お聞きでき、さらに作品を深く楽しむことができました。

 

 

 

陶芸の里・砥部

また先日、第二会場である「砥部町文化会館」の展示も鑑賞してきました。

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 砥部の会場は、一角に作品が展示されているのみでしたが、実際に足を運ぶことで、この自然に囲まれた地での原体験が石本さんの作品に繋がっているのだな、と改めて感じられるはず。

 

また、石本さんの故郷・砥部町は、江戸時代から続く“陶芸の里”として知られています。「砥部焼」は白磁に藍の染付が特徴で、町内には現在も約100軒の窯元が点在しています。

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砥部町では、年に2回「砥部焼まつり」が開催されていて、様々な窯元の作品を一度に見ることができ、しかもお値打ち価格で購入できるということで、毎回朝から晩まで大盛況なイベントです。

私も「砥部焼まつり」には二度訪れたことがあるのですが、もっとじっくり窯元めぐりもしてみたいなと思っていたため、今回6軒ほど訪ねてみました。

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多くの窯元は工房だけでなく、ギャラリーも兼ねており、少しめぐるだけでも様々な作品を見て楽しむことが出来ます。伝統的な文様のものも勿論いいですが、近年若手作家さんや女性作家さんによる新しい形やデザインのものも多く生み出されている砥部焼。
愛媛にお越しの際は、砥部の窯元めぐりもお薦めです!

 

 

 

 

話がそれてきましたが、今回の企画展はメイン会場の愛媛県美術館以外にも、「砥部町文化会館」、道後のホテル「茶玻瑠」、ロープウェイ街のショップ&茶房「MUSTAKIVI」でも開催されています。 

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(「茶玻瑠」1階ロビー)

 

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(「MUSTAKIVI」)

 

実は企画展自体は、もう今週末で終わってしまうのですが(書くのが遅くてすみません…)、「MUSTAKIVI」での展示は来年2019年2月11日(日)まで開催されますし、道後では2月末まで「道後オンセナート2018」も開催されています。

個人的には、「道後オンセナート2018」のお手伝いもしているので、道後のアートめぐりも大変お薦めです!(笑)


そして、2019年春には、京都の細見美術館、夏には東京のスパイラルにも巡回予定だそうです。愛媛までは行けない…という方は、ぜひお近くの会場へ足を運んでみてください。


詳しくは、ホームページを ↓

www.fujiwo-ishimoto.com

 

 

 

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石本さんの作品の、温かな色彩とどこかノスタルジックな風合いは、フィンランドの森や湖、生まれ育った愛媛・砥部の風景、それらが溶け合い生まれてきたもの。
石本さんの布と陶の魅力、そしてフィンランドと砥部の空気を、ぜひ愛媛で体感してみてください。

 

 

 (文/たけうちひとみ/愛媛県在住。趣味で本屋イベントの企画やアートイベント、子ども向けの舞台上演の手伝いを行う)

『三行文庫vol.9』【ワクワクする×クリスマス】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。

ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

いつまでも続きそうな小春日和から一転、凍えるような寒さに震える冬が急にやってきましたね。

 

急にガクッと気温が下がったことで、体調を崩されたという方も多いのではないでしょうか?

 

できれば、1℃ずつ下がっていってくれれば、適応できそうな気もするのですが、そうはいかないところに環境の力というか地球の力のようなものを感じますね。

 

ただ、暖かく過ごしやすい気候が好きなんですが、やっぱりクリスマスの時期だけは寒くあってほしいと思います。

 

なんだか寒い方がロマンチックな気がしませんか?

雪が降った方がクリスマスっぽいですし。

 

 

今回のテーマは12月に入りいよいよクリスマスシーズン到来ということで、

 

「ワクワクする×クリスマス」

 

です。

 

 

今テーマでは、サンタを待っている子ども」と「サンタになる大人・企業」をつなげる活動を全国各地で行うNPO法人・チャリティーサンタの地方支部代表の方2人からも、おススメの一冊を伺いました。

 

 

(1)すがやみなみ(チャリティーサンタ香川支部代表)

 

〇おおきいサンタとちいさいサンタ(著/谷口智則)

おおきいサンタとちいさいサンタ

おおきいサンタとちいさいサンタ

 

 (あらすじ/「Book」データベースより引用)

あるおかのうえに、おおきいサンタとちいさいサンタがすんでいました。プレゼントをくばりおえたふたりのいえに、もう1まい、てがみがとどいていました。てがみにかかれていたおねがいは…?『100にんのサンタクロース』のおはなしのまえのおはなし。

 

・クリスマスに、2人のサンタさんが協力して、ブレゼントを届けに行くお話です

 

・それぞれのサンタさんの家に届いた手紙をきっかけに自分の得意なことを活かし、協力して、がんばる2人のサンタさんに注目です⭐️

 

・表紙に描かれてある2人のサンタさんがどんなことをするのかなぁと思い、読んでみることにしました。絵もとっても可愛いいので、クリスマス前に親子でぜひ読んでみて欲しい1冊です。

 

 

 

(1)藤田ゆか(チャリティーサンタ愛媛支部代表)

 

〇 羊男のクリスマス(著/村上春樹)

羊男のクリスマス

羊男のクリスマス

 

(あらすじ/「Amazon商品説明」から引用)

聖羊祭日にドーナツを食べた呪いの為クリスマスソングが作曲できない羊男は、穴のあいてないねじりドーナツを手に秘密の穴の底におりていきました。暗い穴を抜けるとそこには――。なつかしい羊博士や双子の女の子、ねじけやなんでもなしも登場して、あなたを素敵なクリスマスパーティにご招待します。

 

 

・「羊男」は去年のクリスマスイブに穴の空いたドーナツを食べて、とある呪いに掛かってしまう。呪いをとくために動き出すると、次々と現れる謎多き登場人物たち。言葉や行動に導かれていったゴールの先とは、、、!

 

・思い出は一瞬でもあり、永遠でもある。そこまでの過程は理不尽なこともあるかもしれないけど信じれば思い出はいつまでも自分の心に輝くもの。

 

・クリスマスに新しいクレパスと画用紙のパッドが置いてあったのをきっかけに絵に目覚めたという佐々木マキさんと、村上春樹の世界観の融合を楽しむべし。

 

 

 

 (3)あかまつのりき(三松文庫店主兼「hontopia」編集長)

 

〇 サンタクロースの部屋ー子どもと本をめぐって(著/松岡享子)

サンタクロースの部屋―子どもと本をめぐって

サンタクロースの部屋―子どもと本をめぐって

 

(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)

子どもを本の世界にさそいこむために、おとなは何ができるでしょうか。子どもたちの豊かな心を育むヒントがつまったロングセラーが、普遍的な内容はそのままに、よりいっそう読みやすくなりました。

 

 

・子どもの心の中にはサンタクロースの部屋があるんだ。そこにはサンタクロースを信じる気持ちが詰まっている。

 

・子どもが大人になってサンタさんの存在を知った時、サンタクロースの部屋は無くなると思うかい?

 

・無くならないんだ。サンタクロースの部屋には、愛、夢、喜び、希望、信じる心、そんなきらきらした感情がたくさん詰まってるからね。

 

 

 

(編/「hontopia」編集部)

『大人の児童書目録 vol.5』【きょうはなんのひ?】

こんにちは。

12月になりましたが、シーズン早々

ヒーターが壊れてしまって

幸先の悪さに萎えています、たけはるです。

 

12月になり、CMでは竹内まりやの『素敵なホリデイ』が流れ、

世間はクリスマス一色に。

街はイルミネーションで彩られて、笑顔のカップルが増えた気がします。

彼氏なしの私ですが、

その光景にはこちらもほっこりしてしまいます。

プレゼント何にしようかとか、嬉しい悩みだなあ(笑)

 

今回ご紹介するのは、

そんなプレゼントやサプライズにまつわる

ほっこりするお話です。

 

 

幼いまみこの、とっておきサプライズ。

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今回ご紹介するのは、瀬田貞二・作、林明子・絵の

きょうはなんのひ?』です。

 

初めて読んだのは、私が小学生のころ。

幼稚園に通う妹が、毎月「こどものとも」の絵本を持って帰っていて

その中にあった一冊でした。

その他にどんな本があったかは全く覚えていないのですが、

これは当時の自分の中で衝撃だったので覚えている、珍しい本です。

 

ずっと忘れていたのですが、

昨年、この絵本の絵を描いている

林明子さんの原画の巡回展を見て「あ~!!」と思い出して

買ってしまいました。

 

 

主人公は、小学校に通う女の子・まみこ。

ある日、学校に行くとき、お母さんに

「おかあさん、きょうは なんのひだか、しってるの?

しーらないの、しらないの、しらなきゃ かいだん 三だんめ」

と言い残して出て行ってしまいます。

 

お母さんが階段を見ると、そこには小さな手紙が。

見ると、次の手紙の場所を示すメッセージが書かれています。

見つけるごとに次の場所が書かれていて

傘立ての中、庭の池、ブタの貯金箱、

あげくには通勤したお父さんの背広の中にまで、

合計10枚の手紙を家中に忍ばしていたのでした。

 

お父さんが帰り、その手紙を合わせてみると…

まみこの、さらにビックリほっこりな

サプライズが仕組まれていたのです!

そこには、幼いまみこが、両親のために考えに考えた

とっておきのサプライズプレゼントがありました!!

 

…と、あらすじはここまで。

これ以上はネタバレになるので、読んでのお楽しみということに

しておきますね(笑)

 

 

 目の前の相手が、喜んでくれるということ。

 

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会社でよく、企画を出したり

お客さんに対しての提案を考える、ということをしているのですが、

なかなかいい案がでてこなかったり、ありきたりなものしか

アイデアが浮かばなかったりします。

 

そういう時、すごく悶々として

ただ時間が過ぎていることに、またげんなりして…と、

悪循環に陥ってしまう。でも出てこない。

見えないゴールに吸い込まれるような感覚になります。

 

でも、この本が教えてくれるのは、

「相手がどれだけ喜んでくれるか」ということ。

プレゼントにしても、企画にしても

初めて見た相手が「うわっ!」と驚いて喜んでくれる。

それが、やっぱり根底にあるんだろうなあ、と思います。

「そうだよ、その顔が見たかったんだよ~!!!」と

その顔見たさに、仕事をしている部分は大いにあります。

というか、それがすべてとっても過言ではないくらい(笑)

 

だから、この時期に悩むクリスマスプレゼントも

相手が喜んでくれるなら、モノでも料理で何でもいいと思っています。

ハンバーグでも肉じゃがでも、何でも。

 

なので、私もきちんとした料理を作り始めました(笑)

彩りやお皿、盛り付けひとつ取っても奥深いなあと思う今日この頃。

料理で人を喜ばせるには、まだ遠そうです…

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回もお楽しみに。

 

 

きょうはなんのひ? (日本傑作絵本シリーズ)

きょうはなんのひ? (日本傑作絵本シリーズ)

 

 

 

 (文/たけはる/某雑誌編集者)

 

 

この連載の過去記事はこちらから

『大人の児童書目録』 カテゴリーの記事一覧 - hontopia

 

『三行文庫vol.8』【驚きたい×ミステリー】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。
ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

 

宝島社が発行する

「この○○がすごい!」シリーズの中でも、さきがけともいえる

「このミステリーがすごい!」略して「このミス」。

 

その2019年版が12月11日に発行されます。

ちなみに今年は30周年の節目の年だそうで、掲載内容は、2018年の国内&海外新作ミステリー小説ランキング・ベスト20などなど。

 

10月1日には、

第17回「このミス」大賞も発表されていますし、受賞作品の書籍化も待ち遠しいですね。

 

 

第18回の「このミス」大賞から新設予定であった「U-NEXT・カンテレ賞」を、今回さきがけてサプライズ受賞した、

登美丘丈氏が描く

「その男、女衒」

は実写ドラマ化も決まっており、注目かと思っています。

 

 

 

というわけで、今回も世相に便乗して(笑)、

「驚きたい」ときにピッタリの「ミステリー」本のおすすめ3冊を紹介します。

 


今回はご縁あって、以前からお世話になっている、
学習支援団体「CHANCE」代表の神崎さんからもおすすめの一冊を伺いました。

選書の中には、現在の2018年から大きく遡り、1980年発表の作品なんてものもありますが、

神崎さんの選書も含め、どれもオススメされるのが納得の良作ばかりだと思いますので、ぜひ。

 

 

 

 

(1)神崎竜太(塾講師。学習支援団体「CHANCE」代表)

 

〇 マジックミラー(著/有栖川有栖)

新装版 マジックミラー (講談社文庫)

新装版 マジックミラー (講談社文庫)

 

 (あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
琵琶湖に近い余呉湖畔で女性の死体が発見された。殺害時刻に彼女の夫は博多、双子の弟は酒田にいてアリバイは完璧。しかし兄弟を疑う被害者の妹は推理作家の空知とともに探偵に調査を依頼する。そして謎めく第二の殺人が…。犯人が作り出した驚愕のトリックとは?有栖川作品の原点ともいえる傑作長編。

 


・双子ならではのアリバイ作り、殺害方法。

 

・マジックミラーのように自分からは見えない。相手からしか見えない。自分からしか見えない。相手からは見えない。一方通行な感情が行き交う本格ミステリ。

 

・時刻表とか推理の材料をがっつり載せてきて「解いてみろ!」みたいな挑戦的な空気を醸しだしてるのが好きです。

 

 

 

 

(2)あかまつのりき(三松文庫店主兼「hontopia」編集長)

 

〇 葉桜の季節に君を想うということ(著/歌野昌午)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

葉桜の季節に君を想うということ (文春文庫)

 

 (あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。あらゆるミステリーの賞を総なめにした本作は、必ず二度、三度と読みたくなる究極の徹夜本です。

 

 

・ハードボイルドな探偵役が紡ぐ、謎と恋愛の物語。

 

・「そんなのアリかよ!?」とラストに叫ぶこと間違いなし。


・人生の黄金時代は老いていく将来にあり、過ぎ去った若年無知の時代にあるにあらず。林語堂

 

 

 

 

(3)三田稔(「hontopia」副編集長兼ライター)

 

〇 薔薇の名前(著/ウンベルト・エーコ)

薔薇の名前〈上〉

薔薇の名前〈上〉

 
薔薇の名前〈下〉

薔薇の名前〈下〉

 

 (あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
迷宮構造をもつ文書館を備えた、中世北イタリアの僧院で「ヨハネの黙示録」に従った連続殺人事件が。バスカヴィルのウィリアム修道士が事件の陰には一冊の書物の存在があることを探り出したが…。精緻な推理小説の中に碩学エーコがしかけた知のたくらみ。

 

 

・1327年の北イタリア、カトリック教会が舞台ということもあって、読み進めるごとに、当時の社会の様子や聖書、キリスト教的な宗教感などについての知識が増える気がする。あくまでそんな気がする。

 

・時代背景、風習、そういった周辺要素をフルに活用した本格推理小説という印象。ミステリマニアからも評価の高い作品。

 

・論理を軸に推理して、鮮やかに謎を解決する。名探偵ってやつは神とは相入れないのかもしれない。

 

 

 

(編/「hontopia」編集部)

三松文庫放浪記~滑川BOOK CAMP編~

こんにちは!
三松文庫あかまつです。

 

 

先日、愛媛県東温市で行われた『滑川BOOK CAMP』に参加してきました。
今回はなんと5人で出店するという大所帯。ドライバー三田くんはHELPの後輩を乗せて高松から車で、あかまつは広島からフェリーで向かいます。

さらにあかまつは開始時間ぎりぎりに集合するというお騒がせ具合。はた迷惑な集団です。


イベント開催場所の滑川(なめがわ)は愛媛県東温市にある地域で、森と川がきれいな自然豊かな土地です。

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川辺では子ども達が楽しそうに遊んでいて、夏に来ると川に入って遊べるのでもっと楽しいだろうな、僕も遊びたいなとうらやましくなりました。木々もいい感じに色づいていて秋を感じさせてくれます。

 

 

今回の滑川BOOK CAMPは「森の中で本を楽しむ日曜日」がテーマのイベント

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思ってた以上にTHE自然!という感じで、携帯が圏外になったのは少し驚きました。圏外のおかげで、テーマ通りに森の中で本だけに集中することが出来ました。


さすがBOOK CAMPというだけあって、屋外にはテントが張ってあり、その中で買った本やレンタル本を読むことが出来ます。

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インドア趣味の代表格の読書とアウトドアのキャンプの融合とでもいいましょうか、精神衛生的にとってもいい気がしました笑

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後輩たちが帰ってこないなぁと思っているとテントの中でさぼる姿を発見。 イベントを最大限楽しんでやがる。


今回のイベントで僕が一番驚いたことは「家族連れの多さ」。
絵本の読み聞かせ、絵本レンタル、手作りワークショップなど子どもも楽しめるコンテンツが盛り込んであり、会場中に子ども達の楽しそうな声が聞こえてきました。

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地域の人に愛されるイベントという感じがして、こういう年代にとらわれず開かれたイベントが地域イベントの醍醐味だよなぁと実感します。


三松文庫はいつものように出店ブースでお客様と楽しくお話です。

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土地柄なのか愛媛の方ってみんな優しくないですか?
どのお客様も僕たちのふざけたトークを楽しそうに聞いてくださった気がします。たくさん話しながら好きな本をおすすめしたので、気に入ってもらえると嬉しいなぁ。


お久しぶりの「本の轍」さん、「ゆるやか文庫」さん、「浮雲書店」さんにも出会えました*

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そのほかにも愛媛で本屋をされている「蛙軒(げろけん)」さん、「読×舎(よみかけしゃ)」さん、岡山の古本屋さんの「451BOOKS」さんなど今回も素敵な出会いがたくさんありました。


本ブース以外にも飲食店舗も魅力的なお店が。

f:id:hontopia:20181123101908j:plainいちごスムージーはいちごの味がはっきりしていて美味しかった~。カップも可愛くインスタ映え男子の後輩が喜んでました(笑)

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東温市の美味しいものがつまったお弁当やカレーは即完売。あかまつも三田も食べられなかったことがこのイベント唯一の後悔です…!


そうこうしているといつの間にか日も暮れて肌寒くなり、終わりの時間を迎えていました。秋のものさびしさとイベント終わりの切なさが心に染みてきましたが、それよりも楽しかったという満足感でいっぱいです。


テーマ通り森の中で本当に充実した一日を過ごすことが出来ました。運営スタッフ様、このような素敵なイベントを企画してくださりありがとうございました!また遊びに来たいです。
今回出会えたお客様、読書の秋を楽しんでくださいね。


終わり。




東温市には不思議な魅力があり、三田くんは帰りの車の中で「東温市から離れられん、東温市から離れられん」と狂ったように呟いてましたとさ。また行きたいなぁ。

 

 

(文/あかまつのりき/三松文庫店主)

『三行文庫vol.7』【秋に読みたい×屋外】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。

ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

もう今週末のお話になってしまって恐縮ですが、
11月18日に、愛媛県東温市(松山市の隣)で開催される

 「滑川 BOOK CAMP」

toon-box.com

 に、ご縁あって「三松文庫」が出店させていただきます。

 

東温市のキャンプ場・なめがわ清流の森で開催されるこのイベント。

 

デイキャンプをしながら、本とおいしいものを楽しめるイベントということで、
キャンプもおいしいものも、もちろん本も全部大好きな「三松文庫」としては、
とても楽しみにしていて、決まった日からワクワクドキドキしています!

 

 

森の中で本を楽しむ特別企画として

「なめがわの森で読み聞かせ」

岡山の451BOOKSの根木さんが講師をしてくださる

「大人のための絵本講座」

といった催しもあるようで、お楽しみポイント満載です。

 

 

実は、その「滑川 BOOK CAMP」なんですが、参加にあたって事前に

「秋の野外で読みたい一冊」

を教えて欲しいと言われました。

 

 

今回は、これに便乗して
イベントに参加させていただく「三松文庫」三人それぞれのおすすめの

「秋の野外で読みたい一冊」

を紹介させていただければと思います。

 

 

 

 

(1)あかまつのりき(「三松文庫」店主兼「hontopia」編集長)

 

〇 オチビサン(著/安野モヨコ)

オチビサン 1巻

オチビサン 1巻

 

(あらすじ/「Amazon内容紹介」より引用)

豆粒町を舞台に、オチビサンと仲間たちが繰り広げるあたたかい日常。春はお花見、夏は海水浴、秋はもみじ狩り、冬はお鍋・・・四季の移り変わりを、やわらかいタッチとどこか懐かしい色彩でつづった作品。

 

・四季折々の「オチビサン」を楽しめます。

 

・小さいから見つけられること、感じられること。

 

・小さい秋、みーつけた。

 

 

 

 

(2)三田稔(「hontopia」副編集長兼ライター)

 

〇 カンガルー日和(著/村上春樹)

カンガルー日和 (講談社文庫)

カンガルー日和 (講談社文庫)

 

(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)

時間が作り出し、いつか時間が流し去っていく淡い哀しみと虚しさ。都会の片隅のささやかなメルヘンを、知的センチメンタリズムと繊細なまなざしで拾い上げるハルキ・ワールド。ここに収められた18のショート・ストーリーは、佐々木マキの素敵な絵と溶けあい、奇妙なやさしさで読む人を包みこむ。

 

・どうも気分が落ち込んだとき。そわそわするとき。少しだけ時間のあるとき。深刻なときから他愛ないときまで、ふとしたときに、適当にぱらぱらめくりたくなります。

 

・秋の屋外でハンモックに揺られながら、たまに居眠りしたりなんかもして、ぼちぼち読むのにぴったりかと。

 

・秋は実りの季節でもありつつ、紅葉など、ある種生命の区切りの季節でもあると思います。そんな季節にちょっぴりセンチメンタルに浸るのも一興ですよね。

 

 

 

 

(3)マツモトシュセイ(自称「NO Music,No Life」を地で行く男。現役大学生。「hontopia」で音楽ライターとして活躍中

 

〇 POPEYE(ポパイ)(雑誌)

POPEYE(ポパイ) 2018年 12月号 [Craftsmanship!~たしかにこれは職人技だ~]

POPEYE(ポパイ) 2018年 12月号 [Craftsmanship!~たしかにこれは職人技だ~]

 

 (内容紹介)

1976年創刊の男性向けファッション誌・情報誌。マガジンハウス発行で、毎月10日(日祝日の場合は8・9日)発売。

 

・ニッチなことが幅広く掲載されており、インタビュー記事も濃密で、自分の世界が広がる気がします。ページレイアウトもめっちゃタイプです。

 

・秋は「食欲の秋」とか「読書の秋」とか何かに没頭したくなる季節。POPEYEを読むと没頭したくなることに出会えます。

 

・2018年9月号のハンバーガー店特集は最近の号だと一番面白かったです。なぜなら、僕はハンバーガーが好きだから...じゅるり。

 

 

 

 

(編/「hontopia」編集部)

『大人の児童書目録 vol.4』【自分の謎】

こんにちは。

朝晩はだいぶ寒くなってきて、

早くも朝起きるのが辛いです、たけはるです。

 

先日は、愛媛・松山にて松山ブックマルシェが行われ

多くの方にお越しいただきました!

私も当日配布するフリーペーパーの作成と当日のスタッフとして参加。

昨年から古本の冊数は若干減ったものの、それでも楽しい2日間でした。

 

今日は、厳密にいうと「児童書」ではないのですが

帯に「大人のための、考える絵本」とあったので

「このシリーズで紹介しないわけにはいかない!」とビビッときた一冊です。

 

 

せわしなく生きる大人に聞く「自分ってなんだろう?」

 

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今回ご紹介するのは、赤瀬川原平の『自分の謎』です。

 

 赤瀬川原平というと、高松次郎と中西夏之とともに

ハイ・レッド・センター」という前衛美術グループを組んでいたり、

『月刊漫画ガロ』で漫画を連載したり、

尾辻克彦という名で小説を書いて芥川賞を受賞したりと

「カルチャー」というフィールドで多方面に名を残した方です。

今でいう、星野源みたいな感じでしょうか(笑)

星野源は、アバンギャルドではないけれど…

 

そんな、世の中を独自の視点でとらえて

様々な形でアウトプットしている赤瀬川原平が描く

「こどもの哲学・大人の絵本」。

この本を通して取り上げられているのは、

「自分ってなんだ?」という素朴な疑問です。

 

あまり普段の生活で考えることは少ないと思うのですが、

子どもなんかに「ねえ、なんなの?」って聞かれると

正直きちんと答えられる自信はありません…

 

ただ、赤瀬川原平は

鉛筆と少しの絵の具で描いたゆるい挿絵とともに

様々な角度から考えています。

 

鏡越しに見ている自分は、果たして自分なのか?

「痛い」と感じるものが自分だとしたら

どんどんそぎ落としていって残るものは何なのか?

Aちゃんの中にある「あっちの自分」も自分なのに

どうしてこっちの自分しかいないのか?

 

なんだか目が回りそうな感覚になるのですが、

期待外れな自己啓発本よりもよっぽど考えさせられる一冊です。

 

 

ものの考え方は、ひとつじゃない。

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冒頭に触れた松山ブックマルシェは、

老若男女、古書好きの方はもちろんですが、

サラリーマンや飲食店の店主、年金暮らしのおじいちゃん、

主婦、看護師さん、大学の先生、OL、小学生、大学生、外国人などなど

本当にいろんな人が来てくださいました。

 

でも、普段古本屋さんに通い詰めている感じでない人が

ブックマルシェには来ようと思った。

 

それって何でなんだろう?

何を求めてわざわざ足を運んだんだろう?

 

そんな疑問もわくのです。

 

 

来年、もっと「行きたい!」と思えるものにするためには

この部分ってけっこう大事なんじゃないかと思います。

みんなには、ブックマルシェってどう見えているんだろう。

 

本のイベントはまだまだ多そうですが

そんなことを考えながら行ってみるのも面白いかも。

と思う今日この頃なのでした。

「マルシェ」と呼ばれるイベントも飽和状態だし

何かおもしろいものはないかなあ。

 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

 

 

自分の謎

自分の謎

 

 

 

(文/たけはる/某雑誌編集者)