戦争のミカタ【戦場のハローワーク】

朝、目を覚まして、寝室からリビングに向かい、いつものようにテレビに目を移す。
なぜかいつもより画面が騒がしい気がする。
なにごとかと眠い目を擦りながら眺めていると、画面には、飛行機がビルに突っ込み、黒煙を吹き上げるという、非現実的な光景が、繰り返し、繰り返し写し出されていた。

 

こんにちは、三田です。
上の文は、ぼくが小学生のときの記憶です。
2001年(年代がばれますね)、世の中はアメリカ同時多発テロの話題で持ちきりでした。

 

この後、すぐにイラク戦争が開戦され、子どもながら、戦争(のようなものも含む)を肌で実感したのはこのときが初めてだった気がします。

 

 

このとき、ぼくが感じたのは、「自分の学校や家が攻撃されたらどうしようか、死にたくない」という、なんとも身勝手で、純粋な恐怖でした。

 

今日、ご紹介する本はそんな戦争を題材にした本です。

 

戦場のハローワーク (講談社文庫)

戦場のハローワーク (講談社文庫)

 

 
本書、「戦場のハローワーク」では、”戦争は金になる”、”戦争はビジネスだ”との信念のもと、戦場ジャーナリストである著者が、自身の実際の体験を踏まえながら、戦争取材における様々なノウハウを、ユーモアを交えて紹介しています。

 

 

どの章でも著者の実際の体験をが紹介されており、ジャーナリストを目指していない方でも、危険な地域への向き合い方などは興味深いかと思います。

 

 

特に、「5章 逃走・脱出〜生きるための逃げ方〜」での著者の決死の逃亡劇や治安当局とのやりとりの仕方の緊張感、その場の臨場感は手に汗を握りました。

 

 

著者は本書の中で、”戦争とは究極の道楽である”と述べるなど、全体を通して、どこまでもリアリスティックに、恐怖などどこ吹く風で、好奇心を武器に戦争と向き合っています。

 

 

著者のこの姿勢や発言を「不謹慎」と捉える方もいらっしゃるかもしれません。

 

けれど、著者のような姿勢からでしか見えない真実もきっとあるのではないでしょうか。
事実、著者が戦場についてニヒルに語る内容には、これまでの戦争のイメージと違い、ドキッとさせられるようなものも多いです。

 

 

「戦場は決して、特定の人しか行ってはいけない場所なのではない」
本書を読み返すと、あとがきのこの文章に著者の、戦争や戦場への思い・スタンスのすべてが込められている気がしてなりません。

 

 

ぼく自身はといえば、小学生のときに感じた戦争への恐怖は今も消えていません。
ただ、世界には今もどこかで戦争がなされ、戦場が存在すること。
それを感じていたいと思います。

 

【文/三田稔】