百貨店の人々が織り成す、奇跡のお話【百貨の魔法】ー『本屋大賞特集最終回』ー
様々なライターが、2018年・本屋大賞にノミネートされた10作品を紹介していく特集です。最終回は村山早紀さんの「百貨の魔法」です。
本書は、風早という街にある、戦後から続く老舗百貨店「星野百貨店」を舞台にした物語です。
この本、すごく単純な表現ですが、めちゃくちゃ暖かい気持ちになれます。
優しさを感じました。
心がキラキラしました。
星野百貨店は、あまりにも優しすぎる。
汚くなった僕の心が浄化されたような気分です。
この本を読み進めながら、僕は2人の身近な人物を思い浮かべました。
「母親」と「姪っ子」です。
孫に向けて優しい表情をする母と、それに応えるように笑顔を返す姪っ子。
2人が作り出す暖かくて優しい空間と同じものが、この本の中にもあるように思います。
経営難で閉業が噂されている星野百貨店。
そこのエレベーターガール、新人コンシェルジュ、宝飾品売り場のフロアマネージャー、テナントのスタッフ、創業者の一族らが、それぞれの立場で、街の人々から愛されてきたデパートを守るために、今日も売り場に立ち続けるー。
街の人から風景まで全てを愛する人々が送る日常は、なぜこんなにも素敵なのか。
僕は今、香川県の高松市というところに住んでいます。
そんな中で、僕も高松という街をもっとしっかり見つめようと思いました。そして星野百貨店の人々のように、今、身近にある場所を愛してみようと思いました。
大切なことを教えてくれる1冊になったと思います。
こんなにも暖かな気持ちで読書をしたのは久しぶりです。
明日からも頑張ろう。
本書が、みなさんの活力にもなりますように。
(文/太田さとし)