『大人の児童書目録 vol.8』【チューインガム 一つ】

こんにちは。

3月も下旬、菜の花が咲いているなあ、と思っていたら

もう桜も開花しているようで…

時間の流れに全くついていけておりません、たけはるです。

 

年度末のバタバタのせいで、

つい出てしまうのが「運転の粗さ」。

先日も仕事で原付で移動しているときに、

次の約束に遅れそうになっていて焦っていたら、

後ろから白バイのサイレンが。

速度違反で捕まってしまい、1万円が飛んで行ってしまいました…

 

と言いつつ、また繰り返しそうで怖いのですが、

今回は、そんな「甘い」自分に「罪の重さ」を教えてくれる一冊です。

 

「罪」と向き合うことの大切さ。

 

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今回、ご紹介するのは、

灰谷健次郎・作、坪谷玲子・絵の『チューインガム 一つ』です。

 

この本は、主人公のやすこちゃんが

チューインガムをお店から1つ万引きしたのが分かって、

おかあさんや先生に怒られる、という話です。

 

「万引き」というと、ドラマや映画で

非行に走る少年がしたり、

最近だと万引きで生活する家族の映画もあったりして、

殺人や強盗、強姦などに比べると

そこまで…という認識がありがちな行為。

でも、この本のすごい所は、

この「万引き」という罪への反省に

真正面から向き合っていて、徹底しているところにあります。

 

実際、このお話は

この本の作者で、小学校教師でもあった

灰谷さんの生徒・安子ちゃんとの実話です。

 

遊び心で犯してしまった「万引き」という行為に対し、

安子ちゃんはお母さんに怒られた後、先生とその罪の重さに向き合います。

灰谷さんは、この作品について下記のように語っています。

 

盗みという行為と向き合う ことはほんとうに苦しいわけで、

彼女は許しを請うことによってそこから解放されようとしている。

それはわかるわけです。

 

しかし、許しを請う世界からは魂の自立はないという思いがぼくにある。

盗みをしたということを告げることが

ほんとうのことを言っていることではないという思いがやっぱりぼくにある。

盗みという行為によっていったん失われた人間性を回復するためには、

もう一回盗みというものと向き合うしかないと思うわけです。

 

(中略)

 

これは非常に容赦のない世界です。

安子ちゃんも辛いだろうけれども、ぼくもものすごく辛い。

これはやめるほうがずっと楽です。

なぜこんなむごいことをしているのかという思いが

片っ方ではあるのですけれども、

いまここで、この時間を中途半端に終わらせてしまえば、

安子ちゃんの人間性を回復する道は永久に絶たれてしまう。

いまここで苦しむことが、彼女が強く生きるということに

つながっていくんだと思うと、どうしてもやめるわけにはいかない。

 

(中略)

 

その辛さをお互い耐え抜くことが、

教師と子供のたった一つのどうしても抜きがたい関係だというふうに

考えているわけです。

 

「万引き」という罪に対して向き合うことの辛さと大切さを、

ストレートに教えてくれる、何とも考えさせられる一冊でした。

 

 

向き合ってくれる人がいる、ということ。

 

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私も、万引きではありませんが、

職場やプライベートなど、要領が悪くて指摘されたり、

飲みの席で気が回っていなくて怒られたりすることが結構あります。

 

しかも、言われるのはたいてい同じ人。

「そこまで言わなくても…」と思ったりすることもあるのですが、

そう言ってくれる人って貴重なんじゃないかとも思います。

 

怒るのは、する方もされる方もいい気がしないもの。

どちらかというと、そういう場面は避けたいと思うのではないでしょうか。

 

だからこそ、灰谷さんのように

真正面から向き合ってくれる人、

自分にすごいエネルギーを使ってくれていて、

別に誰かに強要されているわけでもないのにできる人って

すごいなあと思います。

 

灰谷さんがいたからこそ、

安子ちゃんは心の底から反省できただろうし、

もうそんなことは二度としない素直な子に育ったでしょう。

 

幸いにも、私の周りには、

友人や知人、職場の先輩や上司の中でも、

素直に指摘してくれる人、いけないことは「いけない」と言ってくれる人など、

薄っぺらい関係ではなくて、濃く、密に関わってくれる人が多い。

それは、すごく恵まれているなあと実感します。

 

私も、相手を思ってそうできるひとになりたい。

社会人4年目の目標です。

 

 

写真は、先日仕事で伺った食堂さん。

地元に愛され続けて50年近く、

コック帽がよく似合う、腰の曲がったお父さんが、

「熱くないのか!」と思うほどの至近距離でフライパンを見ながら作る、

飾り気のないオムレツです。

 

愛嬌のある笑顔と、気さくに話しかけて下さるフランクさ。

愛され続ける理由は、お父さんの「人徳」なんだろうなあと思うと、

また行きたくなるのです。

 

 

同じオムレツでも、チェーン店ではなくて

こういう店で食べたいと思う今日この頃です。 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

 

 

 

(文/たけはる/某雑誌編集者)