中国古典を味わう【[決定版]菜根譚】
中国古典といえば、「論語」が一番思い浮かぶだろうか。
学生のころ、そういう中国古典は校長先生が話の中で用いる材料の一つでしかなく
「はいはいはい、要は頑張りなさいってことでしょ?そういうのもういいよ、内容空っぽじゃん」
なんて思っていた。
しかしである。
齢30歳が見えてくると、古典のすごい部分、その凄みが感じられるようになってきた。
それは自分が生きた何十倍の年月の間、廃れることなく読み継がれてきたということのすごさであり、時代がどれだけ移り変わろうと、生きるという営みの中には万人に共通する大切なものがあり、そこに価値がある
と思えるようになったのだ。
今では
「老子」の「上善は水の如し」や
「荘子」の「無用の用」の考え方も大好きである。
そして今回紹介する本は、自分の目指したい生き方そのものだ。
この本は訳書であるが、「菜根譚」の著者は洪応明といい、中国の古典の中では、比較的新しいもので、十七世紀の初めごろ、今から約400年前に書かれた本である。
「菜根譚」という題名の「菜根」とは粗末な食事、「譚」とは談と同じ意味で、苦しい境遇に耐えた者だけが大事を成し遂げることができるという意味があるらしい。
「前集」と「後集」に分かれており、あわせて360の短い文章から成っている。
その一つ一つに、ただ受け身としてなんとなく生きるのではなく、地に足つけて生きる力強さが感じられる。
私のこの本の楽しみ方は、パッと適当にめくったところで目に入った文章を、「声に出して」読むことである。
(BLEACHの鬼道の詠唱みたいにかっこよく。藍染惣右介になりきりながら)
そして、その言葉を、自分の生き方や今の生活と照らし合わせて考えてみる。
それぞれの意味自体は、「一喜一憂するな」とか「何事もほどほどがいい」とか端的でシンプルなものが多いが
シンプルなものゆえに、「自分を省みる」いう作業に大きな意味があると思う。
そうすることで、その言葉は自分だけの独自の意味が込められてくる。
自分が解釈したその意味が今の生活をよりよいものにしていく。
ぜひ、この本を読んでお気に入りの一節を探していただけると嬉しい。
最後に私の好きな一節を。
前集の六十九より
燥性者火熾、遇者則焚。寡恩者氷清、逢物必殺。凝滞固執者、如死水腐木、生機已絶。倶難建功業而延福祉。
(燥性なるは火のごとく熾んに、物に遇えば則ち焚く。寡恩なるは氷のごとく清く、物に逢えば必ず殺す。凝滞固執するは、死水腐木の如く、生機已に絶ゆ。俱に功業を建て福祉を延べ難し。)
意味:幸せをもたらすには、落ち着きや余裕を持ち、周りへ温かい心で接し、臨機応変に対処するのがよい。
以上。
(文/ながっちゃん/学校教師)