優美かつ繊細な表現で女性を描く。その女性の美しさたるやうんぬんかんぬん【ミュシャ展―運命の女性たち―】

アルフォンス・ミュシャ。
1860年、現在のチェコ共和国にあたる地域で生まれる。19世紀末から20世紀初頭、ヨーロッパで産声を上げた芸術活動「※アール・ヌーヴォー」を代表する画家である。

 

 
※「アール・ヌーヴォー」とは有機物である植物や花などをモチーフにしたもので、19世紀以前の様式に囚われない装飾が特徴であり、エレガントさとともに装飾性が高い芸術様式のことだそうだ。ちなみにフランス語であり、日本語の意味は「新しい芸術」である。

 

 

先日、広島市のひろしま美術館で2月24日から4月8日まで開催されていた「ミュシャ展ー運命の女性たち―」に行ってきた。
今回の展覧会はミュシャの出身地であるチェコのチマル博士(お医者さん)のコレクションから“ミュシャと女性たち”をテーマとして、作品を選りすぐって展示されたものだそうだ。

なんでも、この“チマルコレクション”は日本で初めての展示とのことである。

 

f:id:hontopia:20180414231043j:plain

 

f:id:hontopia:20180414231027j:plain

(写真2枚:筆者撮影)

 

 

展示されていた作品は、当時販売されていた商品や営業していた企業をPRするために、ミュシャがデザインし描いた広告ポスターなども多く、そのデザインは、現代の広告デザインに通ずるものがあるように感じた。
ミュシャの作品における装飾性などの特徴は「ミュシャ様式」と呼ばれるまでに至っているそうだ。

 

 

さて、展示物は“ミュシャと女性たち”をテーマにしているだけあって女性が描かれた作品が多い。
往年のフランスの女優サラ・ベルナールをはじめ、ミュシャの初恋の人物、自身の妻や娘などが作品には直接的もしくは間接的なモチーフとして描かれているのだが、彼女たちのなんと魅力的なことか。

 

 

展示されているミュシャの作品は写実的なものも多く、描かれている女性たちも限りなく実像に近いものに感じられる。
その女性たちはどのような人物で、ミュシャの人生において、どのような形でその人生を交錯させたのか。
この「ミュシャ展」では、その相関図とも呼べるようなものも年代別に分けられ、展示されていた。

 

 

もちろん、前述したようにデザイン性の素晴らしさなどの作品自体の“魅力”も、とても興味深かったのだが、
個人的にはミュシャの人生における女性の“魅力”もかなり面白く感じた。

 

 

ミュシャはその人生で、様々な女性と出会い、別れ、そして女性たちをモデルにして多くの作品を残している。
そうしたことからも、ミュシャにとっていかに“女性”が重要であったかが分かるような気がするし、女性たちが、ミュシャにとって魅力的な人物であったろうことは想像に難くない。

 


この「ミュシャ展」だけで出会った女性に対するミュシャの思いの全てを知ることはできないし、ほかの作品、文献をみたところでそれは不可能なのだろう。
それこそタイムスリップして本人に聞いてみないことには。
ただ、作品の中の女性たちはとても美しく、素晴らしかったのは事実だ。
その美しさはまさに、立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花といった具合で、ミュシャも惚れに惚れて、恋多き男性と化していたのではないかと想像してみる(※あくまで想像です)。

 


とにもかくにも、今回の「ミュシャ展」は、作品に登場する女性、もといミュシャの人生において関わったすべての女性へのミュシャの思いを想像したくなるような、そんな展覧会であったと思う。

 

 

また国内でミュシャ展があれば、ぜひ足を運ぼう。

 

 

http://www.hiroshima-museum.jp/special/detail/201802_mucha.html
(上記URLから、ひろしま美術館の「ミュシャ展―運命の女性たち」のWEBサイトへ)

 

(文/三田稔/ライター)