腕の中にあるもの、胸の中にあるもの【崩れる脳を抱きしめて】ー『本屋大賞特集第七回』ー

愛なき時代に生まれたわけじゃない

 

キミに会いたい キミを笑わせたい

 

 
愛なき時代に生まれたわけじゃない

 

強くなりたい やさしくなりたい

 

 

こんにちは

 

斉藤和義が好きな26歳あかまつです。

 

様々なライターが、2018年・本屋大賞にノミネートされた10作品を紹介していく特集、

第7回は知念実稀人さんの『崩れる脳を抱きしめて』です。

 

 

開始早々に斉藤和義の『やさしくなりたい』から始めましたが、世の中は愛に溢れているはずなのになぜか見えづらくなっている気がします。シンプルに好きだと言えない環境、多くの人が愛を口に出すことを恐れている気がします。

 

 

今回ご紹介する作品は読んでいると斉藤和義の『やさしくなりたい』が浮かんでくるような、切なさを感じる恋愛ミステリーものです。 

崩れる脳を抱きしめて

崩れる脳を抱きしめて

 

あらすじ
広島から神奈川の病院に実習に来た研修医の碓氷(うすい)は、脳腫瘍を患う女性・ユカリと出会う。外の世界に怯えるユカリと、過去に苛まれる碓氷。心に傷をもつふたりは次第に心を通わせていく。実習を終え広島に帰った碓氷に、ユカリの死の知らせが届く。彼女はなぜ死んだのか?幻だったのか?ユカリの足跡を追い、碓氷は横浜山手を彷徨う。そして、明かされる衝撃の真実。稀代のトリックメーカーが描く、今世紀最高の恋愛ミステリー!!

 

作者の知念実希人さんは現役医師としても活躍しており、医師としての知見を活かしたミステリー作品を多く執筆されています。今回の作品でも実際にある病気、病院内の雰囲気、医師と患者の関係性など細かい描写が丁寧に描かれており、そのことがこの作品に厚みをもたらしています。

 

 

上述したように『崩れる脳を抱きしめて』は恋愛×ミステリーというジャンル。このアンバランスなテーマが上手く絡み合っています。

 

 

前半は読めば読むほどに愛おしくなる碓氷とユカリの恋愛物語。辛い過去を持つ碓氷と脳腫瘍を患うユカリの関係が徐々に近づいていく姿には思えず笑みがこぼれます。

 

 

しかし、不遇の過去と現在があるからこそシンプルな気持ちを言えないふたり。心は近づいているはずなのに。碓氷は研修医なので実習が終わるまでというリミットが、そしてユカリには脳腫瘍という余命がありました。このふたりの関係についてはぜひ本を読んでください。

 

 

そして後半は怒涛のミステリーパート。あらすじにも書いてあるように研修を終えて広島に戻った碓氷のもとへ、ユカリの死の知らせが届きます。彼女の死の真相とは?彼女は本当に存在したのか?
愛おしいほどに深まる謎によって、ページをめくる手が止まりません。

 

 

煽り文である『圧巻のラスト20ページ!』はまったく嘘ではなくラスト20ページでわかる真実には、そうきたか!と驚かされます。様々な謎が一気に解き明かされていくこの感覚はミステリーの醍醐味ですね。

 

 

読後感はとっても爽やかで、一度読み始めるとさくさく読めると思います。恋愛×ミステリーが絶妙なバランスで成り立っているこちらの作品。絶妙な愛の形をぜひ感じてみてください。

 

 

愛なき時代に生まれたわけじゃない 

 

キミに会いたい キミを笑わせたい

 

 

愛なき時代に生まれたわけじゃない

 

強くなりたい やさしくなりたい

 

 

愛なき時代に生きてるわけじゃない

 

手を繋ぎたい やさしくなりたい

 

 

それでは。

過去の特集記事はこちら▼

hontopia.hatenablog.jp