「旅」から「支援」について思いを馳せる。 【脱北、逃避行】

(文/三田)

 

 

昔から、旅行記を読んだり、ロードムービーを見るのが好きで、星野道夫さんの本やヴィム・ヴェンダース監督の映像作品はもちろん、チェ・ゲバラの若き日の旅を描いた「モーターサイクルダイアリーズ」など、何度見直したかわかりません。

 

 

今回ご紹介する本「脱北、逃避行」は、そうした作品に登場する「旅」とは少しニュアンスが違い、北朝鮮から日本への「脱北」という「危険」な「旅」について書かれたノンフィクション作品です。

 

 

著者の野口孝行さんは、日本にある脱北者支援団体「北朝鮮難民救援基金」に所属し、実際に中国国内での脱北者の支援活動を行なっていた方で、それ以前にも、バックパッカーやメーカー、商社勤務など様々な体験をされています。

 

 

そうした著者の経歴もあり、本書では、脱北者が招かれざる者として扱われる中国からの脱出の支援についてがメインで書かれています。

 

 

中国では、脱北者は難民ではなく、不法越境者として扱われ、当局に捕まれば容赦無く北朝鮮へ強制送還された後、厳しい処罰が行われるそうです。

 

 

その中国国内を、密告者や当局の監視の目を避けて脱出し、その後東南アジアを経由して行う、日本への逃避行は、想像を絶する過酷さで、普通の旅行記とはまさに一線を画す内容となっています。

 

 

そうした「旅」の中で垣間見える、脱北者の北朝鮮や日本、韓国への思いや、朝鮮族と呼ばれる中国国内に住む民族の実情なども読み応えがあるかと。

 

 

また、本書後半では、ある失敗から著者は中国当局に拘束され「看守所(日本でいう拘置所)」という場所に入ることになるのですが、その中で、様々な罪で拘束されていた、一癖も二癖もある逞しい中国人の姿や日本の拘置所とは一味違うであろう、その生活環境などにも、大変興味深いものを感じられるかと思います。

 

 

脱北者たちの過酷な「旅」を支援しながら、同行する著者。

 

 

その過酷な「旅」からは「支援」の難しさや支援を受ける側への寄り添い方など、脱北者支援に関わらず、何らかの「支援」に関わっている人たちにとっても、色々考えさせられる内容になっているのではないでしょうか。
そんな風に思います。

 

 

脱北、逃避行 (文春文庫)

脱北、逃避行 (文春文庫)