軽さの妙【風俗ライター、戦場へ行く】

 恋に破れて戦場へー
いつものようにブックオフで、百円本を漁ってると、このようなあらすじの本を見つけて、つい惹かれて買ってしまいました。

 

 

風俗ライター、戦場へ行く (講談社文庫)

風俗ライター、戦場へ行く (講談社文庫)

 

 

 

失恋したから戦場へ??
ふむ、失恋すると自暴自棄になる気持ち、なんとなく分からんこともないなと。

 

 

著者はもともとエロ本の編集を仕事としている、いわゆる風俗ライターです。

 

 

本書は、その著者が、日本での失恋を機に海外に行き、その後ひょんなことから戦場を肌で体験し、戦争取材にのめり込んで行くというあらすじです。

 

 

全体的に、戦争について書かれているとは思えないほど、軽いタッチで書かれています。それは風俗ライターという職業がなせる技なのか、それとも著者の人間性によるものなのかはわかりません。

 

 

しかし、これが読みやすさに繋がっているのはもちろんのこと、随所に光る著者の抜き身の言葉の切れ味を鋭くする形になっているのは間違いないと思います。

 

 

きっかけはどうあれ、著者が実際に戦場を取材し、一人の人間としてそこで感じたモノは決して軽くなどないことが、随所に光る表現から感じられます。

 

 

著者は数々の凄惨な光景を目の当たりにして、「何もできない」自分を感じながら、「人の平等さ」に疑問をおぼえるなど、驚き、怒り、そのほか様々な感情におそわれており、そうした、著者の心情の変化も本書の肝かもしれません。

 

 

「なんだかなぁ」

 


本書を読了した後、天井の蛍光灯を眺めながら、そんなやるせない思いに駆られるのも一興かと。

 

【文/三田稔】