『三行文庫vol.15』【旅をしたい×心に響く本】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。

ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

近ごろは、そろそろと足を忍ばせるように、春が近づいてきたように感じます。

まだ若干の肌寒さは残るものの、ウールのコートを着るのも、少し季節外れになってきましたね。

 

ぼくは寒いとなかなか外出する気がおきないんですが、あたたかくなってくると外出しないと、無性に損したような気持ちになります。

 

特に用事もないし、目的もないけれど、外に出て散歩してみたり、そんなに遠くに行くわけでもないけれど、車を走らせてみる。

 

ちょっとした旅気分でしょうか。

「旅」というと、なんらかの目的を設定するのが普通だと思うんですが、こんな風に「旅をするために旅に出る」というのも気持ちがいいものだと思います。

 

 

本の話をすると、「旅」に出るきっかけになる本が世の中にはたくさんあります。

以前、三松文庫が参加したイベント「タビサキ」の余韻を大いに引きずっていることもあって、今回は

 

「旅をしたい×心に響く本」をテーマに三冊を紹介させていただければ。

 

おススメの一冊をお聞きした方々は「旅」好きの方ばかりなので、実際に旅に出たくなること間違いなしの三冊だと思います。

 

 

 

 

(1)岸本紗奈衣(香川県琴平町のこんぴらさんのふもとで「人生いう“ひとり旅”を豊かにする」をコンセプトにカフェやウェブマガジンの発信を行うほか「栞や」として本の栞の販売なども行う)

shioriya.net

 

〇 旅する種まきびと(著/早川ユミ)

旅する種まきびと

旅する種まきびと

 

 (内容/「BOOK」データベースより引用)

アジアの旅のなかで学んだ、しんぷるな暮らし。あたらしくて、懐かしい。家族のありかた。こころの種をまく、子育て。暮らしを見つめる生きかたが、しみじみと伝わる本。「種まきノート」につづくエッセイ集。

 

(コメント)

・『旅することは、暮らすこと。旅することは生きること。』

布作家・早川ゆみさんがアジアの旅で学んだ“生きることの智慧”が詰まった一冊です。旅人になって30年という月日をかけて発酵させた、旅と暮らしと生きることの原点に触れることばたち。表記にはひらがなと漢字を使い分け、音の響きやことばの持つイメージを大切にされています。

 

 

 

 

(2)くりするか(TABIPPO広島副代表、旅を愛する女の子)

 

〇 『ガンジス河でバタフライ』

ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)

ガンジス河でバタフライ (幻冬舎文庫)

 

 (内容紹介/「BOOK」データベースより引用)

20歳にして、長年夢見ていたひとり旅に出たてるこ。極端な小心者だからこそ、五感をフルに稼働させて、現地の人とグッと仲良くなっていく。インドでは聖なる河ガンジスを夢中に泳ぎ、ぶつかってしまった人に謝ると、なんと流れゆく死体だった…。ハチャメチャな行動力とみずみずしい感性が大反響を呼んだ、爆笑紀行エッセイ第一弾。

 

(コメント)

この分厚い本を読む間、主人公てる子さんと一緒に泣いて笑って、旅をしてました。

 「旅をしたい!」「生きてるって感じたい!」読み終わってすぐ、インドへの航空券を調べていました。

 『インド人が魅力的に見えるのはさ、みんな今日を生きているからなんだよね。』

将来の夢が見つからない、明日やることを整理しよう、そんな毎日を送っている自分。もっと「今」に向き合いたいと思いました。

 

 

 

 

 (3)三田稔(三松文庫仕入れ担当、「hontopia」ライター)

 

〇 ワンダーランド・ソウル(著/小野田美紗子)

ワンダーランド・ソウル (1981年) (評論社の現代選書〈37〉)

ワンダーランド・ソウル (1981年) (評論社の現代選書〈37〉)

 

 (内容紹介/「BOOK」データベースより引用)

1977年1月、厳冬のソウルに通信社員の妻として渡った著者が、子供を育て、韓国語を学びながら、3年間にわたって暮らした隣国の日常の出来事を、冷静な批評眼をもってつづったユニークな報告書、近くて遠い隣国の庶民の姿を新鮮な目でとらえた、韓国を知るための貴重な1冊。

 

(コメント)

最近は、海外旅行先としてもリーズナブルで若者からはトレンドの先端として人気の高い韓国。

K-POP、チーズダッカルビ(ちょっと古い?)、ハッドグ、オルチャンetc...

けれども、この本に登場するのは、そうしたものがまだなくて、街の雰囲気なんかも少しばかり違った時代、1970年代後半の韓国です。

日本の通信社に勤務する夫を持ち、夫の韓国への赴任を契機に、しばらく韓国に暮らすことになった著者ですが、当時のありのままの国民の姿や生活などを冷静な目で捉えています。

著者の見た韓国と今の韓国の姿を比較をしてみるのも面白いと思いますし、小難しい議論みたいなものは全くなくて、一人の人が当時の韓国生活で感じたことを、ありのまま一冊にまとめたといった本で、非常に読みやすいのも特徴です。

過去を旅することはできませんし、他人が実際の生活の中で感じたことを聞いてみるのって、着眼点であったりとか、案外面白かったりしますよね。

そんな一冊です。

 

 

 

 

(編/「hontopia」編集部)

『大人の児童書目録 vol.8』【チューインガム 一つ】

こんにちは。

3月も下旬、菜の花が咲いているなあ、と思っていたら

もう桜も開花しているようで…

時間の流れに全くついていけておりません、たけはるです。

 

年度末のバタバタのせいで、

つい出てしまうのが「運転の粗さ」。

先日も仕事で原付で移動しているときに、

次の約束に遅れそうになっていて焦っていたら、

後ろから白バイのサイレンが。

速度違反で捕まってしまい、1万円が飛んで行ってしまいました…

 

と言いつつ、また繰り返しそうで怖いのですが、

今回は、そんな「甘い」自分に「罪の重さ」を教えてくれる一冊です。

 

「罪」と向き合うことの大切さ。

 

f:id:hontopia:20190321205022j:plain

 

今回、ご紹介するのは、

灰谷健次郎・作、坪谷玲子・絵の『チューインガム 一つ』です。

 

この本は、主人公のやすこちゃんが

チューインガムをお店から1つ万引きしたのが分かって、

おかあさんや先生に怒られる、という話です。

 

「万引き」というと、ドラマや映画で

非行に走る少年がしたり、

最近だと万引きで生活する家族の映画もあったりして、

殺人や強盗、強姦などに比べると

そこまで…という認識がありがちな行為。

でも、この本のすごい所は、

この「万引き」という罪への反省に

真正面から向き合っていて、徹底しているところにあります。

 

実際、このお話は

この本の作者で、小学校教師でもあった

灰谷さんの生徒・安子ちゃんとの実話です。

 

遊び心で犯してしまった「万引き」という行為に対し、

安子ちゃんはお母さんに怒られた後、先生とその罪の重さに向き合います。

灰谷さんは、この作品について下記のように語っています。

 

盗みという行為と向き合う ことはほんとうに苦しいわけで、

彼女は許しを請うことによってそこから解放されようとしている。

それはわかるわけです。

 

しかし、許しを請う世界からは魂の自立はないという思いがぼくにある。

盗みをしたということを告げることが

ほんとうのことを言っていることではないという思いがやっぱりぼくにある。

盗みという行為によっていったん失われた人間性を回復するためには、

もう一回盗みというものと向き合うしかないと思うわけです。

 

(中略)

 

これは非常に容赦のない世界です。

安子ちゃんも辛いだろうけれども、ぼくもものすごく辛い。

これはやめるほうがずっと楽です。

なぜこんなむごいことをしているのかという思いが

片っ方ではあるのですけれども、

いまここで、この時間を中途半端に終わらせてしまえば、

安子ちゃんの人間性を回復する道は永久に絶たれてしまう。

いまここで苦しむことが、彼女が強く生きるということに

つながっていくんだと思うと、どうしてもやめるわけにはいかない。

 

(中略)

 

その辛さをお互い耐え抜くことが、

教師と子供のたった一つのどうしても抜きがたい関係だというふうに

考えているわけです。

 

「万引き」という罪に対して向き合うことの辛さと大切さを、

ストレートに教えてくれる、何とも考えさせられる一冊でした。

 

 

向き合ってくれる人がいる、ということ。

 

f:id:hontopia:20190321205124j:plain

 

私も、万引きではありませんが、

職場やプライベートなど、要領が悪くて指摘されたり、

飲みの席で気が回っていなくて怒られたりすることが結構あります。

 

しかも、言われるのはたいてい同じ人。

「そこまで言わなくても…」と思ったりすることもあるのですが、

そう言ってくれる人って貴重なんじゃないかとも思います。

 

怒るのは、する方もされる方もいい気がしないもの。

どちらかというと、そういう場面は避けたいと思うのではないでしょうか。

 

だからこそ、灰谷さんのように

真正面から向き合ってくれる人、

自分にすごいエネルギーを使ってくれていて、

別に誰かに強要されているわけでもないのにできる人って

すごいなあと思います。

 

灰谷さんがいたからこそ、

安子ちゃんは心の底から反省できただろうし、

もうそんなことは二度としない素直な子に育ったでしょう。

 

幸いにも、私の周りには、

友人や知人、職場の先輩や上司の中でも、

素直に指摘してくれる人、いけないことは「いけない」と言ってくれる人など、

薄っぺらい関係ではなくて、濃く、密に関わってくれる人が多い。

それは、すごく恵まれているなあと実感します。

 

私も、相手を思ってそうできるひとになりたい。

社会人4年目の目標です。

 

 

写真は、先日仕事で伺った食堂さん。

地元に愛され続けて50年近く、

コック帽がよく似合う、腰の曲がったお父さんが、

「熱くないのか!」と思うほどの至近距離でフライパンを見ながら作る、

飾り気のないオムレツです。

 

愛嬌のある笑顔と、気さくに話しかけて下さるフランクさ。

愛され続ける理由は、お父さんの「人徳」なんだろうなあと思うと、

また行きたくなるのです。

 

 

同じオムレツでも、チェーン店ではなくて

こういう店で食べたいと思う今日この頃です。 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

次回もお楽しみに。

 

 

 

(文/たけはる/某雑誌編集者)

 

『せとうちアート探訪 vol.3』 ぼくとわたしとみんなの絵本の世界

「ここのところ、急に冷たい風が吹いたりする日もあるけれど、ほとんど毎日がポカポカ陽気で、公園全体がうす桃色にかすんでいる。」

 (高山なおみさんのエッセイ『帰ってから、お腹がすいてもいいようにと思ったのだ。』より)

 

うす桃色な季節にはまだ少し早いですが、春の訪れをだんだんと感じる3月が好きです。

 

『せとうちアート探訪』第3回は、残る寒さを吹き飛ばすような、可愛い楽しい絵本原画展を2つご紹介します。

 

 

「ぼくとわたしとみんなの tupera tupera 絵本の世界展」(ふくやま美術館)

f:id:hontopia:20190316000648j:plain

 

tupera tuperaさんは、絵本、雑貨、アニメーション、舞台美術など幅広い分野で活躍する2人組のアーティストユニットです。

 

横須賀、三重、浦和と巡ってきた「ぼくとわたしとみんなのtupera tupera絵本の世界展」が、今週末3月24日(日)まで広島県福山市で開催されています。

今回の展示では、代表作である絵本の原画を中心に、立体やイラストレーション、映像作品など、tupera tuperaさんの軌跡を辿る様々な作品と活動を知ることができました。

 

 

福山に、パンダ銭湯現る!

f:id:hontopia:20190316011118j:plain

 

tupera tuperaさんの代表作『パンダ銭湯』、ご存知の方も多いかと思います。

絵本の表紙を見て、可愛いパンダの親子のお話?と思いきや、だんだんと暴かれていくパンダの秘密…。親子の会話や、銭湯内の細かい描写も楽しくて、私自身とても好きな絵本です。

 

展覧会の会場内には、なんと絵本から飛び出したようなパンダ湯が…!

「ささのかほりリンス」や「サササイダー」、絵本の内容を細かく再現されていて、子どもたちも大喜びの空間でした。

 

f:id:hontopia:20190316003332j:plain 

 

 

 こだわりの本づくり

今回の展示を見てまず驚いたのが、絵本の原画の細かさです。

貼り絵やコラージュを駆使した作品が多いのですが、色鮮やかで繊細なパーツを一つひとつ貼り合わせていくその作業は、もはや職人技!


そして、お二人の作品の作り方も素敵。

基本的に、どちらかがお話担当、絵の担当などと決まっているのではなく、お二人で机を並べて相談しながら、同時進行で制作されているのだそう。同じ人間のパーツでも、顔は亀山さんで服は中川さんが作られたりすることもあるとか。そんなにも気持ちが通じ合っているユニット、そして夫婦ってすごい…!
(tupera tuperaさんは、二児のお子さんを持つご夫婦でもあります)

 

 

また福山での原画展を見に行った後日、京都で開催された「布博・紙博」というイベントにtupera tuperaさんがトークゲストとして来られていたので、そこでお話もお聞きしてきました。

f:id:hontopia:20190316010329j:plain

4冊ほど絵本の読み聞かせをしつつ、子どもの好きなあるものの書き方を目の前でレクチャーしてくださったり、最後にはみんなで歌を歌ったり! 制作秘話もふんだんに盛り込んだとても楽しい時間でした。(上の写真は『パンダ銭湯』読み聞かせ中の様子)

 

特に面白かったのが、作る絵本によって素材や画材を色々と使い分けられているというお話。
例えば『パンダ銭湯』のパンダも、耳の部分はカラーインキ、目の部分は少し透けるツルっとした紙、体の部分は黒い布…と読んだ人にはわかると思いますが、ちゃんと意味のあるこだわりが。とはいえ、印刷して絵本になると、全て黒であまり違いは分からないそうです(笑)


何よりお二人が作品作りを楽しんでいるからこそ、子どもも大人も楽しめる作品が次から次へと生まれてくるんだろうなと感じました。

 

 

みんなで楽しむ

 f:id:hontopia:20190316010435j:plain

お二人が制作と並行して大切に取り組まれているのが、全国各地の図書館や書店さんでのワークショップ、絵本ライブの開催です。今回の福山の会場でも、マスキングテープでお面を作るワークショップが開催されました。


「何かを教えてあげたいというような教育的な目的は何もなくて。やりたい人が集まって楽しめたらいい。大人のテクニックを子どもに見てもらったり、逆に子どもらしい発想を大人に見てもらったり。他の人の個性をみんなで楽しもうということ。」(雑誌MOEのインタビューより)

 

 

私は普段、趣味の活動の一つとして、「松山子ども劇場21」というNPO団体のお手伝いもしています。子ども劇場のメインの活動は、プロの劇団さんを松山にお呼びして、舞台劇や人形劇など子どもも大人も楽しめる生の公演をみんなで観る、ということなのですが、他にも夏には子どもたちとキャンプに行ったり、野外で何かを作って遊んだりといった体験活動も様々行っています。

子どもたちと一緒に遊んでいていつも驚かされるのが、子どもの豊かな「発想力」です。絵本や舞台、何もないところから生まれる遊び、それらは子どもたちの発想力や想像力をさらに広げてくれるきっかけになるはずです。また、普段は関わらない大人や、異なる年齢の友達と一緒に活動することで、他の人の個性や多様性も感じることができます。


子どもも大人も一緒に楽しめるtupera tuperaさんの絵本や、ワークショップの活動から、改めて自分にできること、子どもと関わる意義についても考えることができました。

 

ちなみに松山子ども劇場、先日3月17日(日)には『パントマの箱』というパントマイムショーがあったり、24日(日)には『忍者になるんじゃ』という野外活動もあります。

来年度の公演も人形劇などいくつか決まっていますので、少しでもご興味ある方はぜひホームページをご覧いただけたら嬉しいです♪(笑)

matsuyamakodomo.or.jp

 

 

 

f:id:hontopia:20190316000704j:plain

メッセージ性のある分かりやすい教科書のような本ではなく、想像できる余白や予想外のユーモアがあるtupera tuperaさんの作品たち。

先日、「やなせたかし文化賞」の大賞も受賞され、これからますます活躍の幅を広げていかれるのでは。


すでに今年の年末には京都、来年年明けには高知への巡回も決まっているそうなので、今回福山に行けない方も、ぜひお近くの会場へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

お二人のトークを聞いてまた改めて絵本原画を見たくなったので、私ももう一度“ぼくとわたしとみんなの絵本の世界”を体験しに行きたいと思ってます!

f:id:hontopia:20190316001439j:plain

www.city.fukuyama.hiroshima.jp

 

 

 

 

(おまけ)福山アート探訪

f:id:hontopia:20190316004703j:plain

 

福山駅前からバスで30分ほど、ノスタルジックな港町・鞆の浦にも足を延ばしてみました。
2月は海風が少し肌寒かったのですが、細い路地をぶらぶら歩きながら、歴史ある町並みを楽しむことができました。

 

f:id:hontopia:20190316003734j:plain

鞆の浦には築150年の蔵をリノベーションした「鞆の津ミュージアム」もあり、アール・ブリュットな現代アート作品を無料で鑑賞することができます。アール・ブリュットに対して個人的には少し苦手意識があるのですが、今回開催されていた企画展『かたどりの法則』は、アートとは何か、表現とは何か、とても考えさせられる内容でした。

また福山には、「クシノテラス」というアウトサイダーアート専門のギャラリーもあります。ご興味のある方はそちらも合わせて訪ねてみては。

 

それから最近、旅先の純喫茶めぐりにもハマりかけている私。
福山でもいいお店見つけましたよ。

f:id:hontopia:20190316003853j:plain


福山駅すぐ近く、創業63年の「純喫茶ルナ」
3階建ての建物と幅広い客層。名物「プリントップ」をぜひ。

f:id:hontopia:20190316003935j:plain

 

 

 

「絵本になったねずみのシーモア原画展」(松山  本の轍)

絵本好きにおすすめの絵本原画展情報を、もう一つ。

松山にある本屋「本の轍」さんで、3月21日(木)より「絵本になったねずみのシーモア原画展」が始まります。

f:id:hontopia:20190318011556j:plain

絵を描かれた福田利之さんは、本の轍さんのお店ロゴも手がけられている方で、私の一番好きなイラストレーターさんなんです…!

松山で福田さんの原画を見られて、ご本人も来てくださるなんて本当に嬉しいです…。

本の轍さんありがとうございます!!(笑)

 

発売前の新作絵本『ねずみのシーモア』、先日少し見させていただいたのですが、ページ毎に様々な世界が広がるとても素敵な絵本でした。

福田さんの作品は、コラージュを用いたものやギザギザとした線画など、モチーフに合わせて様々な技法を使われています。今回の絵本はいったいどうやってどんな技法で描かれているのか、、生の原画を見るのが楽しみです。

 

“本と雑貨をハシゴして、ついでにコーヒーも飲める本屋さん”をコンセプトに、2017年11月松山市春日町にOpenした、本の轍さん。

f:id:hontopia:20190318012233j:plain

本の販売だけでなく、毎月様々な企画展やトークイベントも開催されているのですが、特に多く開催されているのが、絵本原画展です。


先日3月16日までは、出口かずみさんの可愛くユニークな作品を堪能できる『にぎやかなおでん展』

f:id:hontopia:20190319213749j:plain

f:id:hontopia:20190319213034j:plain

 

また2月には、平澤まりこさんの『ねぶしろ原画展』も開催されました。 

f:id:hontopia:20190319213616j:plain

 

ギャラリーや雑貨店などが少ない松山で、小規模でも本物の絵本原画を見られる、貴重で素敵な本屋さんです。

オープン日、企画展の最新情報は、SNSをぜひご確認ください。

twitter.com

 

 

【3/21 追記】

個展初日、まさかの一番乗りでシーモア君に会いに行ってきました!

全部で11点の原画が展示されていて、福田さんのオリジナルグッズも多数並んでいましたよ。

f:id:hontopia:20190321170346j:plain

 

紙に印刷された絵本と原画を見比べながら、ぜひシーモア君と一緒に本の世界を探検してみてください!

店主・越智千代さん手作りの編みぐるみシーモア君もお待ちしています。

f:id:hontopia:20190321170301j:plain

 

 

松山には、他にも様々な本屋・古本屋さんがありますので、福山もいいけど松山にも!ぜひお越しくださいね。

  

春に向けて野外でのイベントも増えてきましたが、親子や友達と、もしくはのんびり一人で、美術館や本屋さんへ絵本原画を見に出かけてみてはいかがでしょう。

  

(文/たけうちひとみ/愛媛県在住。本にまつわるイベントやアートイベント、子どものための舞台上演のお手伝いなどしています)

 

『三行文庫/番外編』【本を軸に人生を話そうinタビサキ】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。

ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

 

以前の記事でも書かせていただきましたが、先日、岡山県玉野市宇野で開催されたイベント「タビサキ」に三松文庫として参加してきました。

 

 

今回は本屋を出店させていただいただけでなく「本を軸に人生を話そう」 をテーマにブックトークイベントも開催させていただいて、「タビサキ」参加者の5名の方から、人生の転機になった本の感動したポイントなどをプレゼン、ディスカッション形式でたっぷりと聞かせていただきました。

 

 

今回、紹介者の方のお話がとても面白かったこと、なおかつ紹介してもらった本がどれもとても面白そうだったことから、ぜひこの「hontopia」を見ていただいている方にも一部ご紹介したいと思います。

 

 

というわけで、今回の三行文庫は番外編ということで、三行ではないですが、「タビサキ」でのブックトークでおススメされた本をそれぞれのプレゼンターの言葉とともに紹介したいと思います。

(1)幸山 将大(ペイントアーティスト/何度でも立ち返るべき心の居場所をテーマに絵画を制作している)

旅をする木 (文春文庫)

旅をする木 (文春文庫)

 

 〇 旅をする木(著/星野道夫)

広大な大地と海に囲まれ、正確に季節がめぐるアラスカ。1978年に初めて降り立った時から、その美しくも厳しい自然と動物たちの生き様を写真に撮る日々。その中で出会ったアラスカ先住民族の人々や開拓時代にやってきた白人たちの生と死が隣り合わせの生活を、静かでかつ味わい深い言葉で綴る33篇を収録。

 (紹介/「BOOK」データベースより引用)

 

おすすめポイント

「旅する木」は、写真家である星野道夫さんがアラスカを旅しながら書き記したエッセイ集です。極寒のアラスカで暮らす人たちの人生や、一万年前から変わらずある野生カリブーの大移動の話。雪原を一匹で旅するオオカミの話。自分たちが毎日を生きている同じ瞬間、アラスカではグリズリーが日々を生き、呼吸をしているという不思議な感覚。「世界」という言葉は本来とても広い場所を指すものだったんだなという、自分たちがつい忘れそうになる大切な感覚を思い出させてくれる貴重な本です。

 

 

 

(2)しゃけちゃん(いちょう庵女将/刺繍作家としても活躍中)

日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―

日本の七十二候を楽しむ ―旧暦のある暮らし―

  • 作者: 白井明大,有賀一広
  • 出版社/メーカー: 東邦出版
  • 発売日: 2012/02/10
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • 購入: 2人 クリック: 8回
  • この商品を含むブログを見る
 

〇 日本の七十二候を楽しむ―旧暦のある暮らし―(著/白井明大、有賀一広)

日本には二十四の節気と七十二もの季節があることを知っていますか?木の芽起こし、初がつお、土用のうなぎ、秋の七草、羽子板市、晦日正月…。めぐりくる季節や自然を楽しむ、暮らしの歳時記。

(内容/「BOOK」データベースより引用)

 

おすすめポイント

季節の移ろいが、身近で、時に早く、そして愛しく思える一冊です。古来の人々が育ててきた感性やことば、文化に触れることは、自分の中の世界を広げてくれます。自然と生きること、足るを知ること…。暮らしの中で大切にしたいヒントをたくさんもらいました。

 

 

(3)uyuni(エレクトロソロニカ/旅先で得たインスピレーションを音に具体化させる事をコンセプトに清涼感のある電子音とピアノで表現)

棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えること

棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えること

 

〇 棚橋弘至はなぜ新日本プロレスを変えることができたのか(著/棚橋弘至)

ガラガラの会場、ブーイングの嵐、会社の身売り…存亡の危機にあった新日本プロレスを支え続け、ついに奇跡の復活へと導いた立役者・棚橋弘至。プロレスファンからの罵倒を乗り越え、不動のエースになった「100年に1人の逸材」が、逆境の中でもがき続けた日々を激白する。

(内容/「BOOK」データベースより引用)

 

おすすめポイント

棚橋弘至というプロレスラーを知っている人は今やだいぶ増えたと思いますが、この選手が新日本プロレスやプロレス界の危機を救った逸材である事を知っている人はどれだけいるでしょうか。この本はプロレスラー棚橋弘至の自伝でありながら哲学的でもありビジネス書籍にもつながります。また近しい境遇の業界にとっても希望となるイノベーションの書籍となります。きっと逆境に立つ人にとって力になる一冊になるはずです。

 

 

 

 

プレゼンターの方々は、どの方も自分の人生に軸を持っているように感じられる方ばかり。 そんな自分の人生を全うしている方々の本、ぜひとも興味を持っていただけると嬉しいです。

(編/「hontopia」編集部)

想う、書く、届ける【恋文の技術】

こんばんは。

三松文庫あかまつです。

 

 

三松文庫店主を名乗っているくせに

本に関する記事を全然書いていなくてすみません。

 

 

「こういうものを書きたいなぁ」と頭は動かしているのですが

こたつとお布団が僕を離してくれないのです。

 

 

しかし!季節は変わり冬眠期間は終わりました!

こたつを飛び出し、手と足を動かしていきます!春ですから!

 

 

さてさて、

皆さん、最近手紙は書いていますか?

「手紙?昔は書いたことあるけど今はちょっと時間が無くて書いてないなぁ」そんな声が聞こえてきそうですね。

 

 

何かと便利となっている現代。

なんでもかんでも効率化が進み、手間のかかるものは淘汰されていきます。

 

 

僕に届く年賀状だって年々減っている気がします。

(もしかしたら僕の人との繋がりが減っているだけですかね?)

 

 

今回は、この時代にあえて手紙を書きたくなる一冊をご紹介します。

 

 

f:id:hontopia:20190311212712j:plain

『恋文の技術』

あらすじ

一筆啓上。文通万歳!――人生の荒海に漕ぎ出す勇気をもてず、波打ち際で右往左往する大学院生・守田一郎。教授の差し金で、京都の大学から能登半島の海辺にある実験所に飛ばされた守田は、「文通武者修行」と称して、京都にいる仲間や先輩、妹たちに次から次へと手紙を書きまくる。手紙のなかで、恋の相談に乗り、喧嘩をし、説教を垂れる日々。しかし、いちばん手紙を書きたい相手にはなかなか書けずにいるのだった。
青春の可笑しくてほろ苦い屈託満載の、新・書簡体小説。

 

 

僕は森美登美彦氏が大好きなのですが、

この本も森美節全開の独特な文章がとてもおもしろいです。

なぜ手紙のやり取りをしているだけなのにこんなにも笑えるのか。

 

 

この本を読んで思ったのですが、

文章で気持ちを伝えるというのはとても難しいことです。

 

 

突き詰めてしまえば一つのことを伝えたいだけなのに

文章にすると遠回りし過ぎたり、卑下してしまったり、情熱的になり過ぎたり、客観的になり過ぎたり…

 

 

それが本心に近くなればなるほど難しくなります。

恋文となると難易度が高すぎることこの上なしです。

 

 

ああ、自分の想いを伝えるってなんて難しいんでしょう。

 

 

僕も三年前にこの本を読んで、

「よし!俺も手紙を書き文通を始めるぞ!そして字と言葉の練習をすることで文学界に殴り込もう!」と一念発起しました。

字と文章の練習にもなるし、久しぶりに友人ともつながれる、至れり尽くせりではないかと思っていました。

 

 

そして

1通は東京で働く友人へ

1通は高松の緩い後輩へ

1通は香川でお世話になったマダムへ

 

 

僕は文通武者修行を始めたわけです。

 

f:id:hontopia:20190311212923j:plain

 

結果としては返信をいただいて2,3通目でやめてしまいました。

性格がまめじゃなかったんですよね。

 

 

手紙とは根気のいるものです。

昔の人って本当にすごいです。

 

 

そのひと手間を惜しまず、

相手のことを想って書くからこそ

手紙の素晴らしさがあるのでしょうね。

 

f:id:hontopia:20190311213020j:plain

 

ただ、メールだろうが電話だろうがラインだろうが、

誰かのために想いを馳せて、

誰かに伝える言葉は素晴らしいものです。

 

 

さぁ、皆の衆。

ペンをとり手紙を書こう!

内なる気持ちを伝えるために!

 

 

以上、こたつの中からお届けしました。

お便り、ファンレターお待ちしています。

 

 

(あかまつのりき/三松文庫店主/ファンレターに憧れる27歳)

『三行文庫Vol.14』【春を感じる×感性を楽しむ】


ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。

ステキな3冊を3行でー

 

「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。

 

 

季節には色がある。

 

季節には匂いがある。

 

季節には味がある。

 

季節には思い出がある。

 

季節が冬から春へと移り変わりました。

ただ気温が変わっただけでなく、

「あ、季節が変わったな」って感じる瞬間がありますよね。

 

言語化しにくいけど何かもいっしょに切り替わってる気がします。

 

今回はそんな季節の移り変わりにぴったりの

「春を感じる×感性を楽しむ」をテーマにご用意した三冊です。

 

 

今回紹介する3作品のうち、

2作品は同じ作者の本でした。 

 

 「春を感じる」というテーマで、

近い感性の人が見つかるのも三行文庫の魅力です。

(1)まなえもん(webデザイナー目指し勉強中/更新日の今日が誕生日)

 

神様 (中公文庫)

神様 (中公文庫)

 

〇 神様(著/川上 弘美)

(紹介/「BOOK」データベースより引用)

くまにさそわれて散歩に出る。川原に行くのである―四季おりおりに現れる、不思議な“生き物”たちとのふれあいと別れ。心がぽかぽかとあたたまり、なぜだか少し泣けてくる、うららでせつない九つの物語。デビュー作「神様」収録。ドゥマゴ文学賞、紫式部文学賞受賞。

 

・「春に読みたい本」で真っ先に思い浮かびました。紳士で礼儀正しいクマさんとピクニックに行くお話。

 

・ほっこりするのだが、しんみり切なくもなる。去年の春、菜の花畑でピクニックしているときに友人におすすめされた1冊。

 

・今年も読みたいな。そして今年も菜の花畑でピクニックがしたいな。

 

 

 

 

(2)三田 稔(三松文庫仕入れ担当/hontopiaで『映画の食べるを楽しむ』連載中)

 

〇ゆっくりさよならをとなえる (著/川上 弘美)

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

ゆっくりさよならをとなえる (新潮文庫)

 

(内容/「BOOK」データベースより引用)

「いままでで一番多く足を踏み入れた店は本屋、次がスーパーマーケット、三番めは居酒屋だと思う。なんだか彩りに欠ける人生ではある」。春夏秋冬、いつでもどこでも本を読む。居酒屋のカウンターで雨蛙と遭遇したかと思えば、ふらりとでかけた川岸で、釣竿の番を頼まれもする。まごまごしつつも発見と喜びにみちた明け暮れを綴る、深呼吸のようにゆったりとしたエッセイ集。

 

・作者の生きる日常を感じられるエッセイ集

 

・日常に対する感じ方やちょっとしたことを独特に感じられる作者の感性が面白い。そして文章がきれい。

 

・心にゆとりをもつということを改めて考えさせられます。

 

 

 

 

(3)あかまつのりき(三松文庫店主。春の訪れは花粉症で感じた)

 

小説 秒速5センチメートル (角川文庫)

小説 秒速5センチメートル (角川文庫)

 

〇 秒速5センチメートル(著/新海 誠)

(内容/「BOOK」データベースより引用)

いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った2人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく―。劇場アニメーション『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、新海誠監督みずからが繊細な筆致で小説化。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編を収録する。

 

・春には出会いの側面と別れの側面がある。一人の人との出会いと別れが良くも悪くも人生に影響を与えることもある。

 

・初恋に対する思い出の、男女間の差の描写がとても上手で、とても残酷な作品です。

 

・「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」桜の描写に見惚れること間違いなし。

 

 

 

 

(編/「hontopia」編集部)

中国古典を味わう【[決定版]菜根譚】

中国古典といえば、「論語」が一番思い浮かぶだろうか。

学生のころ、そういう中国古典は校長先生が話の中で用いる材料の一つでしかなく
「はいはいはい、要は頑張りなさいってことでしょ?そういうのもういいよ、内容空っぽじゃん」
なんて思っていた。

 

 

しかしである。

齢30歳が見えてくると、古典のすごい部分、その凄みが感じられるようになってきた。


それは自分が生きた何十倍の年月の間、廃れることなく読み継がれてきたということのすごさであり、時代がどれだけ移り変わろうと、生きるという営みの中には万人に共通する大切なものがあり、そこに価値がある

と思えるようになったのだ。

 

今では
「老子」「上善は水の如し」

「荘子」「無用の用」の考え方も大好きである。

そして今回紹介する本は、自分の目指したい生き方そのものだ。

 

[決定版]菜根譚

[決定版]菜根譚

 

 

この本は訳書であるが、「菜根譚」の著者は洪応明といい、中国の古典の中では、比較的新しいもので、十七世紀の初めごろ、今から約400年前に書かれた本である。

 

「菜根譚」という題名の「菜根」とは粗末な食事、「譚」とは談と同じ意味で、苦しい境遇に耐えた者だけが大事を成し遂げることができるという意味があるらしい。

「前集」と「後集」に分かれており、あわせて360の短い文章から成っている。

その一つ一つに、ただ受け身としてなんとなく生きるのではなく、地に足つけて生きる力強さが感じられる。

 

 

私のこの本の楽しみ方は、パッと適当にめくったところで目に入った文章を、「声に出して」読むことである。

(BLEACHの鬼道の詠唱みたいにかっこよく。藍染惣右介になりきりながら)

 

そして、その言葉を、自分の生き方や今の生活と照らし合わせて考えてみる。

 

 

それぞれの意味自体は、「一喜一憂するな」とか「何事もほどほどがいい」とか端的でシンプルなものが多いが

シンプルなものゆえに、「自分を省みる」いう作業に大きな意味があると思う。

そうすることで、その言葉は自分だけの独自の意味が込められてくる。

自分が解釈したその意味が今の生活をよりよいものにしていく。

 

ぜひ、この本を読んでお気に入りの一節を探していただけると嬉しい。

 

 

最後に私の好きな一節を。

 

前集の六十九より

燥性者火熾、遇者則焚。寡恩者氷清、逢物必殺。凝滞固執者、如死水腐木、生機已絶。倶難建功業而延福祉。

(燥性なるは火のごとく熾んに、物に遇えば則ち焚く。寡恩なるは氷のごとく清く、物に逢えば必ず殺す。凝滞固執するは、死水腐木の如く、生機已に絶ゆ。俱に功業を建て福祉を延べ難し。)

意味:幸せをもたらすには、落ち着きや余裕を持ち、周りへ温かい心で接し、臨機応変に対処するのがよい。


以上。

 

 

(文/ながっちゃん/学校教師)

愛と友情の中華料理【映画の食べるを楽しむ:「シュリ」】

ちょっと触れるのが遅いが(※いや、かなり遅い)、平成がそろそろ終わるらしい。

 

ここで平成を振り返ることでもできれば、気が利いているのだが、僕にはそんなことができる記憶力も知見も胆力もないので、直近の2018年のニュースを振り返ってみる。

 

2018年も思えばいろんな出来事があったなと思う。

個人的には、なにかと朝鮮半島に関する話題を目にしたり耳にすることが多かったような。

 

そういえば、昨年の平昌オリンピックを皮切りにこれまでの変化とは少し違った変化が起きたように感じるのがその理由だろうか。

 

トランプ氏が金正恩氏を、国連の場で「ロケットマン」と呼ぶなど、アメリカと北朝鮮が一触触発の状態に感じられたのが打って変わって、初の米朝首脳会談が開催されたり、韓国と北朝鮮の首脳が手を取り合って板門店で会談を行うなど、緊張状態が緩和されたとするような報道も目立った。

 

この情勢の良し悪しは、賛否両論あるだろうし、僕にもわからない。

ただ、今後どんな形であれ世界の様々な問題が解決されて、将来的な平和に繋がるのであれば嬉しい。

 

これまでも様々な展開を迎えてきた朝鮮半島情勢。

今後どうなっていくのか全く予想できないとのことで、若干の興味も湧く今日この頃。

 

 

今回は、そんな朝鮮半島の南北関係をテーマとした作品で、かつて韓国で一大ムーブメントを巻き起こした映画「シュリ」と同映画に登場する食事について紹介させてもらえれば。

 

 

 

〇 シュリについて

シュリ [DVD]

シュリ [DVD]

 

 

1999年に公開された映画で、ラブストーリー要素あり、サスペンス要素あり、アクション要素ありの韓国映画である。

 

韓国に潜入した北朝鮮工作員(女性)と韓国諜報部員(男性)との悲恋を描いたラブストーリーでありながら、南北関係にスポットを当てた社会派作品だ。

 

今でこそ、こうしたテーマの作品は珍しくないが、当時としては革新的なテーマだったそう。

北朝鮮工作員と韓国諜報部員という決してあい入れることのない立場の二人。

この二人が南北の思惑に翻弄される様は見ていて切なく、生まれや育ちは違えど同じ「人間」であることや分断された民族の悲哀を感じさせる。

 

 

 

〇 愛と友情の中華料理

 

劇中、主人公で韓国情報部員のジュンウォンとその彼女・ミョンホンはジュンウォンの相棒のジャンギルと3人で観劇に出かけるシーン。

 

3人の様子からは

ジュンウォン・ミョンホンカップルとジャンギルが良好な関係を築いていることが伺える。

 

和気あいあいとした雰囲気で観劇を楽しんだ後は、3人で屋台の立ち並ぶ市場(?)のような場所で食事をすることになり、大皿の中華料理を食べる。

 

f:id:hontopia:20190122225011j:plain

(「シュリ」本編より。向かって左がジュンウォン、右が彼女・ミョンホン)

 (※字幕は向かいに座るジャンギルに向けて言った言葉です)

 

3人ともリラックスした表情を見せ、会話も弾む。

 

f:id:hontopia:20190122225352j:plain

(「シュリ」本編より。大皿の中華料理)

 

食事中、ミョンホンはジャンギルの、とある行動がきっかけで酢豚を箸で取り損ね、向かい側のジャンギルの席まで酢豚を飛ばしてしまう。

ジャンギルの服を汚してしまったことで、ミョンホンは布巾を取りに席を立つこととなる。

(※ジャンギルのとある行動については、ネタバレの可能性もあるので、本編で確認してほしい)

 

 

その後、ジュンウォンとジャンギルは、しばし席に2人となり、ビールを注文する。

そこで、雑談の中で、2人は日々の情報部員としての任務に対する思いを、どちらからともなく、お互いに話し始める。

 

同じ職場の男2人で話すことといえば、やはり仕事の話になってしまうものだろうか。

 

ジュンウォンは任務の最中、相棒に危機が迫ったとしても、任務を優先すると言う。

それに対し、ジャンギルは相棒を優先し、助けると返答する。

そしてビールを乾杯。

 

2人の間には意見が食い違うことへの反発や憤りはなく、

まるで実際その場面になれば、お互いがどういう行動を取るか知り尽くしているといった様子だ。

 

単なる職場の同僚としての立場を超えた「相棒」としての友情にも似た感情が感じられる。

 

この会話が後半のシーンのための布石になっているように思う。

見直すと少しセンチメンタルに感じるシーンだ。

 

 

ちなみに、このシーンで登場するビールについても一つ小話を。

 

登場するのは、ごく一般的な瓶ビールに見えるが、日本で通常給仕される瓶ビールとは違うところが一つある。

 

それは、瓶ビールの飲み口が紙ナプキンのようなもので巻かれていることだ(※日本でもあるのかもしれないが、僕は出会ったことがない)。

 

「飲み口を拭いてから飲んでください」との意味のようで

どうも、ビールの製造工程で瓶が汚れている可能性があることが理由らしい。

東南アジアなんかでも見られる習慣なんだそう。

 

調べるまでは、炭酸が抜けるのを少しでも防ぐためのサービスか何かかと思っていた。

よく考えれば、そんな紙を少し巻いたくらいで、気体である炭酸を封じ込めることなど出来るわけなかろうに。

僕が知らずに遭遇していれば、そのままゴクゴク飲んだに違いない。

色んな意味で清濁併せ呑む人間になりたいと常々思っているが、これいかに。

 

 

 

(文/三田稔/ライター)