三松文庫放浪記~「マチボン」を片手に高松・片原町を歩く編~
こんばんは、三松文庫の貧乏人担当のあかまつです。
年末年始のお金が出ていくスピードが速すぎて驚きを隠せません。昨日まで財布の中にいたじゃないか…!でもまぁ楽しきことはよいことです。
さてさて、先日の更新で『三松文庫放浪記~高松・菊池寛の足跡を辿る旅~』を公開しました。文学者の足跡を辿るのは僕らも初の試みなので、新しい発見があり楽しかったです。今後もいろんな場所で、文学に限らずいろんな発見をしていきたいなと思った次第です。
真面目に楽しく文学を楽しんだ僕たち三松文庫メンバーですが、三松文庫放浪記といえば忘れちゃいけないのがお酒です。むしろ美味しくお酒を飲むために僕たちは文学に触れているのです。違うか。
どこの飲み屋に行くか悩み、迷える子羊たちを救ったのがこちら▼
マチボンです!
『三行文庫vol.10』【振り返る×2018年思い出深かった一冊】
ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。
ステキな3冊を3行でー
「三行文庫」
第2、第4水曜日更新。
クリスマスも終わって、もう年末ですね。
12月25日が終わると同時に街の雰囲気も新年に向けて模様替えしていくようです。
ハロウィンから年末にかけてのスピーディな街の変化には毎年驚かされます。
みなさんのこの一年はどんな一年だったでしょうか?
最高の一年だったと胸を張って言える方もいらっしゃれば、ひどかったと言う方もいらっしゃるでしょう。
ただ、いろんな方々に聞いたところでは
みなさん一様に「あっという間だった」とおっしゃられていました。
時の流れは早いですね。
某名曲のように時の流れに身をまかせていると、それこそあっという間に人生が終ってしまいそうです。
まだ、一度の人生を捨てることさえかまわないほどの「熱」を経験したことのない私には、いささか酷なほどの早さです。
月並みではありますが、一日一日を大切に生きていきたい、そんな風に思う今日この頃です。
さて、年末であることに加え、来年でついに平成も終わり。
節目の年は、三松文庫にとっても節目ということで、今回は三松文庫の三人で
「振り返る×2018年思い出深かった一冊」
をテーマに来年の抱負も込めて紹介したいと思います。
第10回にして、早くも「気分×テーマ」とは少しずれているんじゃないかとのお声が聞こえてきそうですが、そこはご愛嬌。
多目に見ていただければ幸いです。
この一年、たくさんの方々に支えられて、三松文庫は活動させていただきました。
「hontopia」を見てくださっている方含め、みなさんいつも本当にありがとうございます。
来年の三松文庫も何卒よろしくお願いいたします。
(1)あかまつのりき(三松文庫店主兼「hontopia」編集長)
〇 ボクたちはみんな大人になれなかった(著/燃え殻)
(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
それは人生でたった一人、ボクが自分より好きになったひとの名前だ。気が付けば親指は友達リクエストを送信していて、90年代の渋谷でふたりぼっち、世界の終わりへのカウントダウンを聴いた日々が甦る。彼女だけがボクのことを認めてくれた。本当に大好きだった。過去と現在をSNSがつなぐ、切なさ新時代の大人泣きラブ・ストーリー。あいみょん、相澤いくえによるエッセイ&漫画を収録。
・あかまつ的に2018年という年は、お付き合いしていた人に2回振られる散々な年でした。
・もう大丈夫と強がる心、もう忘れかたらなんて言える心の、どこか柔らかい部分に、そっと染み入る小説です。
・自分の中に過去の思い出をしまって、僕たちは大人になっていくのです。
(2)三田稔(三松文庫仕入れ担当兼「hontopia」副編集長)
〇 地上最後の刑事(著/ベン・H・ウィンタース)
(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
半年後に小惑星が地球に衝突し、人類は壊滅するという予測が発表された。ファストフード店で死体で発見された男性も、未来を悲観し自殺したのだと思われた。しかし新人刑事パレスは他殺を疑い、同僚たちに呆れられながらも捜査をはじめる。世界はもうすぐなくなるのに、なぜ捜査をつづけるのか?そう自問しつつも粛々と職務をまっとうしようとする刑事を主人公としたアメリカ探偵作家クラブ賞受賞作!
・たとえ世界が終わるとしても、変わらないということのかっこよさに惹かれて購入しました。
・周囲の人間が職務に対し、投げやりになることで科学捜査など事件解決のための既存の手法が使えず、アナログな捜査手法になるのが斬新かもしれません。
・このシリーズ3部作らしいので、来年は残り2作品を読むのを楽しみにしています。
(3)トミー祐作(三松文庫メンバー。現在サラリーマン生活3年目)
〇 ビジネスモデル2.0図鑑(著/近藤哲郎)
(内容/「BOOK」データベースより引用)
100のすごい仕組みが見るだけでわかる!世界最先端スタートアップから大企業まで、完全網羅した決定版。自分でビジネスモデルが作れる「ツールキット」付き!
・世界中で話題になっているビジネスの仕組みの凄さを図解で分かりやすく解説してくれる一冊
・世の中にはあっと驚く発想の知らないサービスが山のようにある
・年末年始は時間あるのでこれ読んで自分の働いてる会社の事業を実際に図解してみると、新しい発見もあるかも…?
(編/「hontopia」編集部)
三松文庫放浪記~菊池寛生誕130周年・没後70周年「足跡を辿る旅」編~
三松文庫放浪記の更新を初めて担当するということで、その重責に震えております。
こんにちは、三田です。
唐突ですが、今年はとある文豪にとっての節目の年なのですが、ご存知ですか?
そう、何を隠そうタイトルから丸わかりで恐縮ですが
あの菊池寛の生誕130周年であり、没後70周年なのです!
菊池寛。
作品にあまり馴染みがない方でも、名前くらい聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか?
香川県の出身の文学者で、直木賞、芥川賞の創設者でもあります。
小学校の道徳の教科書なんかで、短編を読まれたという方もいらっしゃるかもしれません。
とまぁ、偉そうに語ってしまいましたが、今回の旅に出るまで、三松文庫メンバーは菊池寛に対して、あいまいな知識しか持っておらず、作風や人柄に至っては、無知といっていい状態でした(笑)
香川県は三松文庫にとっても「海の見える一箱古本市」などでお世話になっているほか、メンバーが住んでいたこともあって、なにかと縁が深い県です。
ちょうど、高松市のサンクリスタル高松で
「菊池寛記念館第27回文学展 菊池寛生誕130周年・没後70周年記念 菊池寛を振り返る」
という企画展が開催されているということもあって、
この節目の年に菊池寛について知りたい!
と思い立ち、店主のあかまつくんと2人で菊池寛の足跡を辿る旅に出ました。
12月19日。
高松市にあるサンクリスタル高松に到着した三田とあかまつ。
サンクリスタル高松は、1階、2階に高松市立図書館、3階に菊池寛記念館、4階に高松市歴史資料館がある複合施設です。
学生時代から、高松市立図書館にはよく足を運んでいたのですが、恥ずかしながら、三田もあかまつも3階、4階には足を運んだことがありませんでした…
館内に入った後は、まず常設展から。
3階の菊池寛記念館へ入ります。
常設展内および企画展内は撮影NGとのことだったので、撮影オッケーの出た場所を撮影。
常設展では、菊池寛の親族や親交のあった方々のインタビューなども盛り込んだ紹介映像のほか、その一生と人物像が資料とともに紹介されていました。
「父帰る」や「藤十郎の恋」などといった映画化された代表作品についても、解説などが展示されており
初めて菊池寛を知る人でも一から学び・楽しめるような展示内容となっています。
また、菊池寛は直木賞・芥川賞の創設者ということもあって、館内には歴代直木賞・芥川賞受賞作およびその作家の解説も展示されているという豪華絢爛ぶりです。
4階で開催されていた企画展も、今回初公開となる菊池寛の生家・菊池家の古文書などが展示されており、見どころたっぷり。
個人的には菊池寛が生前愛用していたというチェスターコートの分厚く暖かそうな見た目から着心地を想像するなどしても楽しめました(笑)
受付の方に少しおはなしを伺ってみると、企画展は盛況で、わざわざ遠方から来られる方も多いそう。
ちょうど「文豪とアルケミスト」というスマホゲームに菊池寛が登場し、菊池寛記念館とコラボしていることもあって、それをきっかけにして来館される方も多いんだとか。
大衆文学を志し、人に読まれる本を追求し続けた菊池寛。
あくまでも「人」にスポットを当て、掘り下げる姿勢に、ただ圧倒され
菊池寛のことが好きになった三田とあかまつでした。
菊池寛のように「人の感情を見抜く天才」とか呼ばれてみたい…!
サンクリスタル高松を後にした三松文庫は、先日の「滑川BOOK CAMP」のお手伝いをしてくれた後輩と合流。
香川県でいつもお世話になっている「吾里丸2」でうどんに舌鼓を打ちます。
菊池寛記念館で知識欲が満たされ、ごり丸でお腹も満たされた一行は
菊池寛ゆかりの地を巡るため、高松市が発行する「菊池寛ウォーク」の案内に沿って市内散策に。
百舌坂
百舌を捕まえる名手で、少年時代「百舌博士」と言われていた菊池寛が、百舌を捕まえていた場所ということで、名付けられた「百舌坂」
残念ながら、百舌を見つけることはできませんでしたが
「いったいどうやって菊池少年は百舌を捕まえとったんやろうか」
「そういや、百舌って獲物を木の枝に突き刺すんやったな」
なんてことに思いを馳せながら、しばらくの間、坂を行き来する車をぼんやりと眺めました。
菊池寛生家跡
百舌を捕まえる菊池寛に思いを馳せた後は、菊池寛の名を冠する道「菊池寛通り」に向かいます。
菊池寛は1888年(明治21年)12月26日に、香川県香川郡高松7番丁(現高松市天神前)で生まれたそうです。
残念ながら、その生家は残っておらず、今は駐車場になっていましたが、菊池寛の生家があったことを示す標識がありました。
菊池寛顕彰碑・菊池寛文学碑
生家跡の前の道を挟んで向かい側の中央公園内には、菊池寛顕彰碑と菊池寛文学碑が。
顕彰碑には菊池寛の座右の銘である
「不實心不成事 不虚心不事(実心ならざれば事成さず 虚心ならざれば事知らず)」
の文字が刻まれています。
誠実でなければ、事は成せない。
虚心坦懐にして、物事を理解できる。
だいたいこんな解釈で合っているでしょうか…(笑)
「うーん、深い」とひとしきり唸る三田とあかまつ
文学碑には代表作の1つ「父帰る」の作中の、百舌が登場する一部が刻まれており
ここにも百舌を見つけ、ほのぼのしました。
菊池寛銅像
同じく中央公園内には、菊池寛の銅像も立っていました。
「父帰る」像
「菊池寛通り」といえば、このブロンズ像とまで言える、代表的なスポットだと思います。
像は「父帰る」の一場面を表したもの。
数十年ぶりに帰宅したダメ父が再び出て行こうとする場面を像にしています。
次男の新次郎は父を引き止めようとし、妻・おたかと娘・おたねは泣くばかり。
長男の賢一郎は父を許せず、頑なな様子です。
賢一郎の握った拳から、愛憎入り混じった複雑な感情が読み取れるような気がしますね。
とここで、あかまつくんが我慢ができなくなったのか
「菊池寛の本が欲しい」
と言い出したこともあって、休憩がてら、以前「海の見える一箱古本市」で、お隣に出店させていただいた「本屋ルヌガンガ」さんへ。
さっそく「本屋ルヌガンガ」さんで菊池寛の本の有無を尋ねると「ある」とのこと!
そそくさと購入するあかまつくん。
店主さんの話では、やはり定期的に菊池寛の本があるかどうか聞かれたりするのだとか。
そうしたお客さんの中には、僕たちのように「菊池寛ウォーク」からの流れで立ち寄った方もいらしたりするのかもしれませんね。
三松文庫といえばこれ。
というくらいにお馴染みの「アフタヌーン・ビール」
店内で、またまた昼間からビールをいただきます(※「本屋ルヌガンガ」さんにはカフェスペースがあって、コーヒー紅茶などのほか、お昼からビールもいただけるのです)。
各々、購入した本を片手にビールを飲む。
まさに至福の時間です。
ちなみに、ぼくは来年1月23日に「本屋ルヌガンガ」さんで開催されるイベント
「『逝きし世の面影』読書会」の参加予約をちゃっかり行いました(笑)
今から楽しみです。
「本屋ルヌガンガ」さんを出たあとは、菊池寛ゆかりの浄願寺跡で狸の「はげさん」を見たり
同郷だと言って金を無心に来る相手に、菊池寛がこの天神の向きを尋ねたという
「華下天神」を見て回るなど、充実した「菊池寛ウォーク」を行いました。
今はもうないのですが
菊池寛が帰高のたびに、ギリギリの時間でも立ち寄り一品料理を頼んだという「料亭 大忠」。
できれば、そんな菊池寛が愛した料亭に一度行ってみたかったなーなどということを唯一の心残りとする三松文庫一行なのでした。
(※「料亭 大忠」ではありませんが、この後、香川のおいしい料理とお酒をいただきました)
(写真・文/三田稔)
クリスマス特集【サンタさんが届ける絵本と想い~Book Santa~】
こんばんは。
三松文庫店主のあかまつです。
前回の三行文庫にて『わくわくする×クリスマス』というテーマで本をご紹介しました。彼氏彼女で過ごす風潮が出来上がってしまっているクリスマスを、少し恨めしく思いながらも結局クリスマスというものにわくわくしている自分がいます。それはきっと子どものころにプレゼントを届けてくれた「サンタさん」という夢のある存在がいるからだろうなと思います。
今回はあの頃の気持ちに戻って、クリスマスのわくわくした感覚を伝えたいと思い、三行文庫特別編としてチャリティーサンタ香川支部副代表の西村早耶香さんにも三行をもらいました。
〇 西村早耶香(チャリティーサンタ香川支部副代表)
〇 クリスマス・オールスター(ピーマン村の絵本たち)(著/中川ひろたか)
(あらすじ/「MARK」データベースより引用)
クリスマスの日、園の子供たちがツリーの飾り付けをしていると、押し入れから誰かの声がします。覗いてみるとおひな様や鯉のぼりが「クリスマスをしてみたい」と言うのです。そこで…。
・私が小さかったころ、両親が買ってきてくれて読みました。
・みんなでクリスマスを楽しもうというメッセージが込められています。
・人だけでなく、ひな祭りのお雛様、お内裏様、鯉のぼりとか運動会の玉入れとか、色んなものも一緒にクリスマスを楽しもうとするのが魅力です。
「みんなでクリスマスを楽しもう」というメッセージが素敵ですね。サンタさんという存在がいるのも、大人たちが子どもを楽しませてあげたい・笑顔にしてあげたいという思いがあるから続いているんだと思います。
そして西村さんの所属するNPO法人チャリティーサンタという団体のチャリティー活動の一つに、クリスマスに向けて『Book Santa』を行っているそうなので本日はこちらを紹介します。
Book Santaとは―
「厳しい環境に置かれている全国の子どもたちに、イブの夜、サンタクロースが絵本を届ける」という社会貢献活動です。
支援希望者が「厳しい環境にいる子ども達に届けたい」という思いで購入していただいた本を、書店とチャリティーサンタが提携し、クリスマスイブにお届けします。
※厳しい環境にいる子ども達とは…クリスマス時期に困難な状況(経済的理由、病気・入院、親子が死別、災害被害などでクリスマスをお祝いするのが大変な家庭など)にいる子ども。
僕は今までクリスマスにサンタさんが来ることが当たり前だと思っていました。世界中のどの子ども達にも等しくサンタさんが来て家族で幸せに過ごすことが当たり前、クリスマスに悲しんでいる子がいるなんて考えたこともありませんでした。
しかし実は様々な事情でサンタさんが来ない子が日本にもいる。その現実を知って自分の無知さを呪いました。でも、そんな子ども達に、絵本とクリスマスのわくわくした体験をお届けすることが出来る方法があります。
そう、それがBook Santaなのです。
ぜひ「あなたが届けたい絵本」を選んで、Book Santaに参加してみませんか?
あなたも誰かのサンタクロースです。
(文/あかまつのりき/三松文庫店主)
心から人を愛するために【愛するということ】
今までの人生の中で、時折こんな疑問にぶつかったことがある。
「愛するとはどういうことか」
ということである。
人間関係と幸福は、密接に関係している。社会という共同体の中で生きる上で、より親密な人間関係を築き、より幸福に充実した生活するために、必要なものが「愛」なのではないかと感じたのだ。
だが、私は、、、
「学校や家庭、職場、友人、恋愛・・・生活の中の様々な人間関係の中で、本当に私は人を愛することができているのか。」
「心から人を信頼しているわけではなく、見返りを求め、『愛されるために』打算的に人と接しているだけなのではないか。」
「うわべだけで『愛』という言葉を使っていて、一時的にその言葉に酔っているだけなのではないか。」
「本来の私は人を愛することができない冷たい人間で、『愛』や『愛する』といった気持ちや言葉を、心のどこかで冷めた目で見ている自分がいるのではないか。」
そんなふうに思うことがあるのだ。
それらのことでかなり悩み、そこで本書と出会った。
- 作者: エーリッヒ・フロム,Erich Fromm,鈴木晶
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 1991/03/25
- メディア: 単行本
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タイトルは「愛するということ」。
まさに私が知りたいことそのままだった。
愛するということについての理論を体系的に理解し、どうしたら心から人を愛することができるようになるのかというところを探求したかった。
読み進めていくうちに、このような文があった。
人は意識の上では、愛されないことを恐れているが、ほんとうは、無意識のなかで、愛することを恐れているのである。
この文を読んだ時、息が詰まったのをよく覚えている。
私は「愛することができない」のではなく、「愛する」ことを恐れ、自ら避けていたのだ。
私は、安全と安定を望み、危険から自分を守ろうとしていた。私は動かず、ただ私の殻の中にとどまっていただけなのだ。
人間関係で傷つきたくない、苦痛を味わいたくない。
でも愛されたい。
私は大きな矛盾を抱えていたことに、気付かされた。
そして、さらに著者は「愛する」ことのあるべき姿勢をこう述べている。
愛するということは、なんの保証もないのに行動を起こすことであり、こちらが愛せばきっと相手の心にも愛が生まれるだろうという希望に、全面的に自分をゆだねることである。
本書を読んで、一番よく分かったことといえば「愛するということの難しさ」に尽きる。
この文を読んでも、「愛するということ」が、とてつもなく高い高い壁に感じられる。
だが、そんな高い壁を私は認識し、自分から壁に手と足をかけ、登ろうとしている。
本書を読んで、「愛するということ」の本質を理解することはまだまだできていないだろうが、何か大きなものを得られたような気がした。
(文/ながっちゃん/学校教師)
『せとうちアート探訪 vol.1』 布と陶、フィンランドと砥部
はじめまして。たけうちひとみと申します。
普段は愛媛松山のとある場所でほそぼそ働きながら、趣味で本屋イベントの企画をしたり、アートイベントや子ども向けの舞台上演のお手伝いをしたり、、、あれこれしています。その繋がりで三松文庫ご一行と知り合いまして、hontopiaで記事も書かせていただくことになりました。
私に何が書けるだろう…と考えたのですが、本の紹介やイベントレポートは他の皆さん素敵な記事たくさん書かれているので、まだ記事が少なめの「アート」に関して、好き勝手書かせていただこうと思います。
美術館やギャラリーやアートプロジェクトや、自分が行ってみて良かった!と思うアートについて、ゆるーくご紹介できればと。美術の専門家でも何でもないのですが、記事を読んで、次の休日にちょっと行ってみようかなーと思っていただけたら嬉しいです。
とりあえず今のところは【せとうち】のアートスポットとその周辺案内、の予定です。
よろしくお願いします!
今回は第1回ということで、まずは私の地元・松山で開催中の企画展をご紹介します。
『石本藤雄展 -マリメッコの花から陶の実へ-』
石本 藤雄さん
1941年愛媛県砥部町出身、フィンランド・ヘルシンキ在住。
1970年にフィンランドに移り、1974年から同国を代表するライフスタイルブランド「マリメッコ」で32年に渡りテキスタイルデザイナーを務める。現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門の一員として陶芸制作に取り組む。カイ・フランク賞、フィンランド獅子勲章プロ・フィンランディア・メダル、日本では旭日小綬章など多数。
北欧デザインと聞いて、まず多くの人がイメージするのは「マリメッコ」のあの有名な花柄ではないでしょうか。しかし、「マリメッコ」には可愛い花柄以外にも、本当に多様な種類のテキスタイルがあるんです。
石本さんは、マリメッコに32年間在籍し、その間に400点を超えるテキスタイルデザインを生み出されました。何を隠そう北欧が好きすぎて卒業旅行でフィンランドに行った私としては、あのマリメッコの数少ない日本人デザイナーの石本さんが愛媛出身だなんて、初めて知った時はとても驚きました…!
石本さんの作品の面白さは、そのデザインの幅広さにあると思います。
布のテキスタイルでも、花や果実などをモチーフとした温かな色合いのものから、クレヨンで少しずつ色味を変えた風景コレクション、シンプルなモノトーンの線画パターン、一見同じ人がデザインしたとは思えないような多様な作品が並びます。
原画やスケッチを見ることで、どのようにデザインを生み出してきたのか、そのアイデアの秘密も少し知ることができますよ。
テキスタイルデザインだけでなく、現在はフィンランドの老舗陶器メーカー「アラビア」のアート部門に所属し、陶芸家としても数多くの作品を発表されている石本さん。
柔らかな布に対し、硬く冷たい陶器ですが、石本さんの作品はどれも色鮮やかで、瑞々しさも感じられます。
今回は、石本さんの作品と愛媛県美術館の所蔵作品を、山や海といったテーマごとに展示した会場もあり、石本さんの思い描く世界観をあれこれ体感できる見ごたえのある展示空間となっています。
私はせっかくなので、10月27日企画展初日に愛媛県美術館で行われた、石本さんご本人によるフロアレクチャーにも参加させていただきました。
石本さんを囲んで大人数でぞろぞろと作品を鑑賞する不思議な時間(笑)でしたが、マリメッコ在籍当時のお話や、一つ一つのデザインに込められた想いや制作秘話を直接お聞きでき、さらに作品を深く楽しむことができました。
陶芸の里・砥部
また先日、第二会場である「砥部町文化会館」の展示も鑑賞してきました。
砥部の会場は、一角に作品が展示されているのみでしたが、実際に足を運ぶことで、この自然に囲まれた地での原体験が石本さんの作品に繋がっているのだな、と改めて感じられるはず。
また、石本さんの故郷・砥部町は、江戸時代から続く“陶芸の里”として知られています。「砥部焼」は白磁に藍の染付が特徴で、町内には現在も約100軒の窯元が点在しています。
砥部町では、年に2回「砥部焼まつり」が開催されていて、様々な窯元の作品を一度に見ることができ、しかもお値打ち価格で購入できるということで、毎回朝から晩まで大盛況なイベントです。
私も「砥部焼まつり」には二度訪れたことがあるのですが、もっとじっくり窯元めぐりもしてみたいなと思っていたため、今回6軒ほど訪ねてみました。
多くの窯元は工房だけでなく、ギャラリーも兼ねており、少しめぐるだけでも様々な作品を見て楽しむことが出来ます。伝統的な文様のものも勿論いいですが、近年若手作家さんや女性作家さんによる新しい形やデザインのものも多く生み出されている砥部焼。
愛媛にお越しの際は、砥部の窯元めぐりもお薦めです!
話がそれてきましたが、今回の企画展はメイン会場の愛媛県美術館以外にも、「砥部町文化会館」、道後のホテル「茶玻瑠」、ロープウェイ街のショップ&茶房「MUSTAKIVI」でも開催されています。
(「茶玻瑠」1階ロビー)
(「MUSTAKIVI」)
実は企画展自体は、もう今週末で終わってしまうのですが(書くのが遅くてすみません…)、「MUSTAKIVI」での展示は来年2019年2月11日(日)まで開催されますし、道後では2月末まで「道後オンセナート2018」も開催されています。
個人的には、「道後オンセナート2018」のお手伝いもしているので、道後のアートめぐりも大変お薦めです!(笑)
そして、2019年春には、京都の細見美術館、夏には東京のスパイラルにも巡回予定だそうです。愛媛までは行けない…という方は、ぜひお近くの会場へ足を運んでみてください。
詳しくは、ホームページを ↓
石本さんの作品の、温かな色彩とどこかノスタルジックな風合いは、フィンランドの森や湖、生まれ育った愛媛・砥部の風景、それらが溶け合い生まれてきたもの。
石本さんの布と陶の魅力、そしてフィンランドと砥部の空気を、ぜひ愛媛で体感してみてください。
(文/たけうちひとみ/愛媛県在住。趣味で本屋イベントの企画やアートイベント、子ども向けの舞台上演の手伝いを行う)
『三行文庫vol.9』【ワクワクする×クリスマス】
ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。
ステキな3冊を3行でー
「三行文庫」
第2、第4水曜日更新。
いつまでも続きそうな小春日和から一転、凍えるような寒さに震える冬が急にやってきましたね。
急にガクッと気温が下がったことで、体調を崩されたという方も多いのではないでしょうか?
できれば、1℃ずつ下がっていってくれれば、適応できそうな気もするのですが、そうはいかないところに環境の力というか地球の力のようなものを感じますね。
ただ、暖かく過ごしやすい気候が好きなんですが、やっぱりクリスマスの時期だけは寒くあってほしいと思います。
なんだか寒い方がロマンチックな気がしませんか?
雪が降った方がクリスマスっぽいですし。
今回のテーマは12月に入りいよいよクリスマスシーズン到来ということで、
「ワクワクする×クリスマス」
です。
今テーマでは、サンタを待っている子ども」と「サンタになる大人・企業」をつなげる活動を全国各地で行うNPO法人・チャリティーサンタの地方支部代表の方2人からも、おススメの一冊を伺いました。
(1)すがやみなみ(チャリティーサンタ香川支部代表)
〇おおきいサンタとちいさいサンタ(著/谷口智則)
(あらすじ/「Book」データベースより引用)
あるおかのうえに、おおきいサンタとちいさいサンタがすんでいました。プレゼントをくばりおえたふたりのいえに、もう1まい、てがみがとどいていました。てがみにかかれていたおねがいは…?『100にんのサンタクロース』のおはなしのまえのおはなし。
・クリスマスに、2人のサンタさんが協力して、ブレゼントを届けに行くお話です
・それぞれのサンタさんの家に届いた手紙をきっかけに自分の得意なことを活かし、協力して、がんばる2人のサンタさんに注目です⭐️
・表紙に描かれてある2人のサンタさんがどんなことをするのかなぁと思い、読んでみることにしました。絵もとっても可愛いいので、クリスマス前に親子でぜひ読んでみて欲しい1冊です。
(1)藤田ゆか(チャリティーサンタ愛媛支部代表)
〇 羊男のクリスマス(著/村上春樹)
(あらすじ/「Amazon商品説明」から引用)
聖羊祭日にドーナツを食べた呪いの為クリスマスソングが作曲できない羊男は、穴のあいてないねじりドーナツを手に秘密の穴の底におりていきました。暗い穴を抜けるとそこには――。なつかしい羊博士や双子の女の子、ねじけやなんでもなしも登場して、あなたを素敵なクリスマスパーティにご招待します。
・「羊男」は去年のクリスマスイブに穴の空いたドーナツを食べて、とある呪いに掛かってしまう。呪いをとくために動き出すると、次々と現れる謎多き登場人物たち。言葉や行動に導かれていったゴールの先とは、、、!
・思い出は一瞬でもあり、永遠でもある。そこまでの過程は理不尽なこともあるかもしれないけど信じれば思い出はいつまでも自分の心に輝くもの。
・クリスマスに新しいクレパスと画用紙のパッドが置いてあったのをきっかけに絵に目覚めたという佐々木マキさんと、村上春樹の世界観の融合を楽しむべし。
(3)あかまつのりき(三松文庫店主兼「hontopia」編集長)
〇 サンタクロースの部屋ー子どもと本をめぐって(著/松岡享子)
(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
子どもを本の世界にさそいこむために、おとなは何ができるでしょうか。子どもたちの豊かな心を育むヒントがつまったロングセラーが、普遍的な内容はそのままに、よりいっそう読みやすくなりました。
・子どもの心の中にはサンタクロースの部屋があるんだ。そこにはサンタクロースを信じる気持ちが詰まっている。
・子どもが大人になってサンタさんの存在を知った時、サンタクロースの部屋は無くなると思うかい?
・無くならないんだ。サンタクロースの部屋には、愛、夢、喜び、希望、信じる心、そんなきらきらした感情がたくさん詰まってるからね。
(編/「hontopia」編集部)
『大人の児童書目録 vol.5』【きょうはなんのひ?】
こんにちは。
12月になりましたが、シーズン早々
ヒーターが壊れてしまって
幸先の悪さに萎えています、たけはるです。
12月になり、CMでは竹内まりやの『素敵なホリデイ』が流れ、
世間はクリスマス一色に。
街はイルミネーションで彩られて、笑顔のカップルが増えた気がします。
彼氏なしの私ですが、
その光景にはこちらもほっこりしてしまいます。
プレゼント何にしようかとか、嬉しい悩みだなあ(笑)
今回ご紹介するのは、
そんなプレゼントやサプライズにまつわる
ほっこりするお話です。
幼いまみこの、とっておきサプライズ。
今回ご紹介するのは、瀬田貞二・作、林明子・絵の
『きょうはなんのひ?』です。
初めて読んだのは、私が小学生のころ。
幼稚園に通う妹が、毎月「こどものとも」の絵本を持って帰っていて
その中にあった一冊でした。
その他にどんな本があったかは全く覚えていないのですが、
これは当時の自分の中で衝撃だったので覚えている、珍しい本です。
ずっと忘れていたのですが、
昨年、この絵本の絵を描いている
林明子さんの原画の巡回展を見て「あ~!!」と思い出して
買ってしまいました。
主人公は、小学校に通う女の子・まみこ。
ある日、学校に行くとき、お母さんに
「おかあさん、きょうは なんのひだか、しってるの?
しーらないの、しらないの、しらなきゃ かいだん 三だんめ」
と言い残して出て行ってしまいます。
お母さんが階段を見ると、そこには小さな手紙が。
見ると、次の手紙の場所を示すメッセージが書かれています。
見つけるごとに次の場所が書かれていて
傘立ての中、庭の池、ブタの貯金箱、
あげくには通勤したお父さんの背広の中にまで、
合計10枚の手紙を家中に忍ばしていたのでした。
お父さんが帰り、その手紙を合わせてみると…
まみこの、さらにビックリほっこりな
サプライズが仕組まれていたのです!
そこには、幼いまみこが、両親のために考えに考えた
とっておきのサプライズプレゼントがありました!!
…と、あらすじはここまで。
これ以上はネタバレになるので、読んでのお楽しみということに
しておきますね(笑)
目の前の相手が、喜んでくれるということ。
会社でよく、企画を出したり
お客さんに対しての提案を考える、ということをしているのですが、
なかなかいい案がでてこなかったり、ありきたりなものしか
アイデアが浮かばなかったりします。
そういう時、すごく悶々として
ただ時間が過ぎていることに、またげんなりして…と、
悪循環に陥ってしまう。でも出てこない。
見えないゴールに吸い込まれるような感覚になります。
でも、この本が教えてくれるのは、
「相手がどれだけ喜んでくれるか」ということ。
プレゼントにしても、企画にしても
初めて見た相手が「うわっ!」と驚いて喜んでくれる。
それが、やっぱり根底にあるんだろうなあ、と思います。
「そうだよ、その顔が見たかったんだよ~!!!」と
その顔見たさに、仕事をしている部分は大いにあります。
というか、それがすべてとっても過言ではないくらい(笑)
だから、この時期に悩むクリスマスプレゼントも
相手が喜んでくれるなら、モノでも料理で何でもいいと思っています。
ハンバーグでも肉じゃがでも、何でも。
なので、私もきちんとした料理を作り始めました(笑)
彩りやお皿、盛り付けひとつ取っても奥深いなあと思う今日この頃。
料理で人を喜ばせるには、まだ遠そうです…
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回もお楽しみに。
(文/たけはる/某雑誌編集者)
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