『大人の児童書目録 vol.3』【アレクセイと泉のはなし】  

こんにちは。

2018年も残り100日を切りました、たけはるです。

 

先日、愛媛・松山のシャッター商店街、柳井町商店街にて

空きビルをまるまる使って「やなぎ堂書店」という古本イベントを実施しました。

11月は「松山ブックマルシェ」もあります。

ぜひ、秋の旅行は愛媛・松山へ。

 

そんな愛媛では、先日、伊方町の原発再稼働が正式に決まったと

報道などで話題となりました。

賛否両論、いろいろな意見が飛び交いましたが、

今回は、ちょうどそんな時に見つけた絵本のご紹介です。

 

どこにでもある「日常」なのだけれど。

 

 

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 今回ご紹介するのは、『アレクセイと泉のはなし』です。

 

この本は、写真家で、映画監督でもある本橋成一が手がけた

映画『アレクセイと泉』(2002年)と同名の写真集の内容を児童向けにしたもの。

映画は、音楽に坂本龍一が入り、

ベルリン国際映画祭やロシア・サンクトペテルブルグ映画祭などで

高く評価されています。

 

 

この絵本の舞台は、東欧・ベラルーシ。

ロシアの東側、ウクライナの北側にあり、

豊かな自然と、教会やお城といった歴史的建造物も残る素敵な国です。

 

ただ、1986年のチェルノブイリ原発事故では

南からの風を受けて大きな被害を受けた地域でもあります。

ここで取り上げられているのは、そんなベラルーシの東南部にある

小さな村ブジシチェです。

 

 

主人公・アレクセイの住むこの村では、

チェルノブイリ原発事故を受けて、

学校跡や森、畑、作物から放射能が検出されました。

 

放射能を恐れて多くの人が村を離れ、

残ったのは55人のお年寄りとアレクセイだけ。

 

完全に放射能に汚染された村とされていたのですが、

その中で放射能が検出されなかったものがありました。

それは、村の生活を支える「泉」の水だったのです。

 

100年経ってブジシチェに湧き出ているという、この「泉」の水。

汚染されたとして遠ざけられた村の中には、

こんこんと沸き続ける「泉」の水に感謝しながら

毎日を過ごす、村人の暮らしがありました。

 

 

本当の「豊かさ」って、何だろう。

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この夏、仕事の関係で生まれて初めて伊方町に行きました。

 

40km近く伸びる佐田岬半島の中には

元々、70近くの集落があり、

それぞれの集落で、漁や農業、酒づくりなどをしながら暮らしていました。

 

伊方原発ができたのを機に町外からも多くの人がやってきて、

民宿や飲食、娯楽などの仕事が生まれ、

また一段と賑わいを見せていたそうです。

 

ただ、現在では原発の勢いも弱くなり

若い人はどんどん町を去っているうえに、

メロディーラインという主要道路ができ、人の導線も大きく変わって

限界、さらにはもう崩壊してしまった集落も多いといいます。

 

 

豊かな自然、綺麗な海など、圧倒される絶景がたくさんあるし、

昔からずっと続くお祭りや盆踊りなどの風習が根強く残っているなど

そこで生活する人たちの息づかいというか、

リアルな営みも残る地域なのですが、

その生活は原発と常に隣り合わせ。

「放射能」という影が見え隠れしているのです。

 

だから、最近流行りの「地方創生」にも何となく乗り切れない。

移住しに来なよ!って全力で言えない。

いつ、何が起きるか分からないから。

 

これは、伊方町に限らず、

原発がある町はどこも抱えている問題なんだと思います。

 

 

本当の意味での、その土地での「豊かさ」って何なんだろう。

いろいろ考えさせられる一冊です。

 

 

 

伊方町では来月、各集落で秋祭りが行われるそうです。

車で2時間かかるけど、でも行きたくなっちゃうんですよね~(笑)

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

次回もお楽しみに。

 

アレクセイと泉のはなし

アレクセイと泉のはなし

 

 

(文/たけはる/某雑誌編集者1年目)

 

 

この連載の過去記事はこちらから

『大人の児童書目録』 カテゴリーの記事一覧 - hontopia

 

『三行文庫vol.4』【熱くなりたい×スポーツ】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。
ステキな3冊を3行でー


「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。


今回も前回の特集に続いて「秋」にフォーカスします。

「熱くなりたい×スポーツ」

特集です。

 

今回は、偶然にも野球関係の本が2冊続きましたが、ご飯少なめのお茶漬けのように、さらりと楽しんでいただければ嬉しいです。

 

続きを読む

中学生時代(思春期)の恋について【富士山さんは思春期】

突然ですが、中学の時の恋って甘酸っぱくていいものですよね。

中学生の恋といえば、僕にとっては切ない片想い…なんちゃって。

学校での1日の中で、好きな子とほんの少し話せただけで、それはもう胸がドキドキしていたような気がします(遠い目)。

今思い出しても、あのころはまさに思春期も思春期、思春期ど真ん中だったなと…

あのころの胸のときめきを取り戻したい!!


今回、紹介するのは、そんな中学生時代の思春期あるあるな恋愛模様にフォーカスした漫画、「富士山さんは思春期」です。

 

富士山さんは思春期 コミック 全8巻完結セット (アクションコミックス)

富士山さんは思春期 コミック 全8巻完結セット (アクションコミックス)

 

 

この漫画は、身長181センチの富士山牧央(女)と身長160センチの上場優一(男)の中学二年生凸凹カップルが主人公なラブコメです。

中学生時代から、好きな子と付き合えるなんて、羨ましい…!!

もっとも昨今は小学生でも彼氏彼女がいたりするご時世のようですが(笑)

この傾向には今後も拍車がかかっていったりするのでしょうか。

 

脱線しました。本筋に戻ります!

 

主人公・富士山さんは中学生としては規格外の大きさです。

当初は、上場くんはなんとなく気にはなっていたものの、富士山さんと付き合いたいとかそういった思いはなく、お互い恋愛対象というわけではなかったと思います。


しかし、とある出来事がきっかけで、上場くんは、富士山さんの天真爛漫さに触れ、急速に惹かれることとなり、その場の勢いで告白することに。
その場の勢いというなんともなシチュエーションにも関わらず、上場くん、見事に富士山さんからOKをもらいます。

そして、そこから2人の交際が始まることになります。

全体を通して、中学の時の甘酸っぱいような、なんというか少し気恥ずかしさもあるような恋を上手に描写している作品です。


この漫画を読んで、自分のキラキラした学生時代に思いをはせるも良し、「僕(私)もこんな恋がしたかった!」と嘆くもよし、そんな「ザ・青春」漫画です。


そしてこの作品には、ドキドキ要素(笑)も満載です。

いわゆるちょっとエッチな描写もあったりはするんですが、過度に性的な表現であるとかそういう感じではまったくないんです。

「二人とも青春してるな~」と思わせるのが上手な作者だな~と思います。

「ザ・青春な作品が好きな人たち」や「あの頃の感傷に浸りたい人たち」などに、ぜひオススメしたい漫画です。

 


(文/北岡たけし/「生活に1冊でも多くの漫画を」を座右の銘とする漫画ライター)

 

三松文庫放浪記~関西進出編~

 こんばんは、三松文庫あかまつです。

 

本日の更新は【三松文庫放浪記~関西進出編~】です。


三松文庫初の関西の一箱古本市出店!

田舎育ちの三松文庫メンバーは関西という都会で無事に生き抜くことが出来るのか!どきどきはらはらの展開を見逃すな!(大嘘)

というわけで関西のレポートをゆるゆるとお伝えしていきますね^^

 

 

〇 9月8日(土)

 

日曜日の『鳴く虫と一箱古本市』に向けて、前日に関西入りしたメンバー達。
雨の影響を心配しつつも、このメンバーが集まればまずはお酒を飲みます。

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なぜか東北名物きりたんぽ(笑)

 

気持ちよく酔いが回ってきたところで、赤松に電話が届きます。

 

「明日の鳴く虫と一箱古本市ですが、残念ながら中止とさせていただきます」

 

大雨で開催が怪しいなとは思っていたんですが、まさかの中止でした。ただ僕たちよりも開催元の方のほうが残念なはず。わざわざ電話をくださったことに感謝でした。

 

中止の話を聞いても、ただでは転ばないお気楽集団三松文庫。次の日に何をするか考えながら、飲みながら、考えながら、飲みながら、話は進まないまま夜は更けていきます。笑

 

〇 9月9日(日)

 

若干の二日酔いで朝を迎えた三松文庫メンバー。
まずは開催元である『みつづみ書房』さんへ訪問をすることにしました。

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みつづみ書房
住所:兵庫県伊丹市宮ノ前3丁目1-3 浅岡ビル1階 
HP:http://www.mitsuzumi-shobo.com/


みつづみ書房さんは兵庫県の伊丹市にある素敵な古本屋さん。

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店内は壁中に本が敷き詰められており、どこを見てもおもしろそうな本があるわくわくする空間でした。

 

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店主さんに挨拶をしたあと、みつづみ書房さんが関わっている様々なイベントの様子等について聞いたり、伊丹市で開催されているおすすめイベントを教えていただいたりと、

 

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初めてとは思えないぐらい楽しく優しく出迎えていただきました。

 

みつづみ文庫さんでは毎月のように楽しそうなイベントが開催されているので、皆さん兵庫県に行った時はぜひ立ち寄ってみてください。

ちなみに、私、あかまつの大好きな音楽グループ(※MOROHA)の出るフェスなどにも関わっているそうで、興奮冷めやらぬ訪問となりました。

 

いつか必ずや、みつづみ書房さんといっしょにイベントに参加出来るよう、活動を頑張ろうと誓った三松文庫です。


みつづみ書房さんから暖かいエールをもらった後は、伊丹市美術館で行われている「レオレオニ展」へ

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子連れの方が多く、絵本コーナーでは子ども達が一生懸命絵本を読んでいるのが印象的でした。

人は何らかの形で他人(ひと)と関わらずには生きていけない。

有名なスイミーだけでなく、レオレオニの絵本には人と関わっていくうえでの大切なメッセージが多く込められており、大人にも心に響く内容でした。

 

絵本で子どもに戻ったあとは大人の時間です。みつづみ書房さんに紹介してもらったワインバー(※「ウィナー」という店名です。気になった方はぜひ)は残念ながら空いていなかったので、伊丹市のおしゃれな居酒屋さんでアルコールを摂取して解散です。

 

そんなこんなで、文化度の高い伊丹市が大好きになった三松文庫でした。


〇 9月10日(月)

 

ちなみに9日に解散したんですが、赤松は関西に残り『約50人のブックカバー展』というものを見てきました。

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「約50人の作家による架空の書店のブックカバー」というどれも個性的な展示でした。

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残念ながら一箱古本市は雨で中止となりましたが、今回も本を通して人とつながれたこともあって、とても楽しい三松文庫放浪記となりました。


関西にもたくさんの刺激をもらいました!!

三松文庫としても、これから楽しいことをどんどん仕掛けていこうと企んでいるので、何卒よろしくお願いいたします。


それでは。

 

(写真提供:三田稔、たけうっちー)

 

(文/あかまつのりき/三松文庫店主)

『三行文庫vol.3』【おなかがすいた×食欲増進】

ステキな3人が毎回「気分×テーマ」に沿った本を紹介。
ステキな3冊を3行でー


「三行文庫」

 

第2、第4水曜日更新。


台風等で何かと忙しない二百十日ではありましたが、酷暑も過ぎ去り、秋の気配ただよう今日この頃です。
夏バテ気味だったけれど、次第に食欲が戻ってきたという方も多いのではないでしょうか。


そんなところで、今回は美味しい特集。

「おなかがすいた×食欲増進」

特集。


3冊とも食欲を刺激してくれることはもちろん、心も満たしてくれる作品であること間違いなしです。

 

 

 

(1)あかまつのりき(三松文庫店主兼hontopia編集長)


〇 ぼくがラーメンたべてるとき(著/長谷川義史)

ぼくがラーメンたべてるとき

ぼくがラーメンたべてるとき

 

(あらすじ/「BOOK」データベースより引用)
ぼくがラーメンたべてるとき、となりでミケがあくびした。となりでミケがあくびしたとき…とおくとおくはなれたくにでいまなにがおこっているのだろう?おなじこのそらのしたで。


・僕がラーメンを食べている時、君は何をしている?


・君が何かをしている時、世界はどうなっているんだろう。


・平和への想いが込められた絵本です。

 

 

 

(2)佐々木真司(地方新聞社記者)


〇 世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂ひとりぶん100レシピ(著/はらぺこグリズリー)

世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂 ひとりぶん100レシピ (光文社新書)

世界一美味しい煮卵の作り方 家メシ食堂 ひとりぶん100レシピ (光文社新書)

 

(内容/「BOOK」データベースより引用)
人気レシピブログを運営する著者が行き着いた哲学は、「適当で楽で安く済んで、でも美味しい料理こそ、本当に必要な料理じゃないだろうか?」ということだった。「ひとりぶん」レシピで、材料はスーパーで手に入るもの、かつ一円単位で値段も明記。「適量」や「少々」という表記も一切なし!簡単で美味しいからこそ、料理のモチベーションが湧いてくる。「ひとりで食事をする時間」を最高に楽しくて美味しい時間にするための最高の一冊、ここに誕生!


・ 挑戦的なタイトルに惹かれて購入。ちなみに煮卵専門のレシピ本ではない。


・どのレシピも材料費付きで、出費がわかりやすく、何より簡単。


・1番のおススメはやっぱり煮卵で。お試しあれ。

 

 

 

(3)北岡たけし(生活に1冊でも多くの漫画を」を座右の銘とする漫画ライター。本人が面白いと思った本だけ紹介する)


〇 忘却のサチコ(著/阿部順)

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

忘却のサチコ 1 (ビッグコミックス)

 

 (あらすじ/「Amazon内容紹介」より引用)
ただ忘れるために…美食を求めて東へ西へ!
佐々木幸子(ささき・さちこ)、29歳。職業、文芸誌編集者。
仕事は順調、結婚も決まり、これまで完璧な人生を歩んできた。
あの日までは…!!
美味しいものを食べた時に得られる”忘却の瞬間”を求めて、
ありとあらゆる美食を追いかける!!
絶品グルメ・コメディー、開幕!!


・食事に求めるものは人それぞれか。「忘れるための食事」に共感できる。


・おいしそうな食事シーンはもちろん、サチコの日常も笑えて楽しい。


・高畑充希主演でドラマ化も(2017年放送済み)。ドラマもぜひ。

 

 


(編/「hontopia」編集部)

 

テイクアウトのアメリカンな中華料理【映画の「食べる」を楽しむ:「エターナル・サンシャイン」】

中華料理は世界中どこでも馴染み深い料理だと思う。
ただ、中華料理と一口に言っても、中国国内の各地方によって特色があって、食べるものや味も異なるというのは有名な話だ。

 
そうした「中華料理の多様性」は、日本の中華料理店でも、たまに見かける「四川料理」や「広東料理」といった看板から、身近に感じとれるかもしれない。

 
日本に留学していた中国人の友人に聞いたところによれば「中国では地方によって食べるものや味付けはかなり異なる。日本でいうところの関西と関東の味付けの違い程度とは異なる。ちなみに、中国で食べる中華料理と日本で食べる中華料理は全く別物」とのことであった。

 
「四川料理」や「広東料理」といった種類のほかにも、いわゆる「ジャパニーズ中華料理」なるものがあり、普段日本人が親しんでいるのは、こちらということなのだろう。

 
となると世界各国で食べる中華料理もそれぞれ味が異なっていたりするのだろうか。
例えば、イタリアンテイストの中華料理やアメリカンテイストの中華料理といった風に。


前置きが長くなったが、今回紹介するのは「テイクアウトのアメリカンな中華料理」および、それが登場する「エターナル・サンシャイン」という映画だ。

 


〇「エターナル・サンシャイン」について

2004年公開のアメリカ映画。
奇抜な展開の作品で有名な脚本家、チャーリー・カウフマンがプロデューサーおよび脚本を務めている恋愛映画だ。
ちなみにアカデミー賞の脚本賞をはじめ、様々な賞を受賞している作品でもある。
内容については、お互いに記憶除去の手術を受けた男女が主人公で、「記憶」と「愛」をテーマにしている。

 
主人公のジョエルとクレメンタインはカップルである。
しかし、近頃ギクシャクしており、クレメンタインが癇癪から「記憶除去手術」を受けて、自分の中の「ジョエルに関する記憶」を消去してしまう。
その影響で、赤の他人のような振る舞いを見せるクレメンタインを見て、ジョエルの方も癇癪を起こし、「記憶除去手術」を受けて、自分の中の「クレメンタインに関する記憶」を消去しようとする。
しかし、ジョエルは「記憶除去手術」の最中、クレメンタインとの思い出の中を彷徨いながら、無意識下で記憶除去に抵抗し始める。

 
というのが本作品の大まかなあらすじだ。

 
主人公であるジョエルをジム・キャリーが演じている。
平凡なことにコンプレックスを持ちながら、少々“チョロさ”を感じさせる主人公を好演している。

 
内容の大筋は先述したとおりであるが、「記憶除去手術」中のジョエルの記憶世界の描写は、当時としては斬新で、今見ても面白い。
また、手術中、眠り続けるジョエルをよそに、現実世界でのクレメンタインや他の登場人物たちが起こす、すったもんだの展開も面白く、脇を固める人物らの内面の掘り下げが興味深いのも特徴だろう。

 

 

〇「テイクアウトのアメリカンな中華料理」

ジョエルの記憶世界で、クレメンタインとの思い出が一つ一つ繰り返される。
その思い出の一つとして登場するのが、ベッドの上で隣り合い、2人で紙パックに入ったテイクアウトの中華料理を食べるシーンだ。

 
実は、この紙パックに入ったテイクアウトの中華料理、登場する洋画や海外ドラマがなかなか多い。
作品中で「見たことがある」と言う方も多いのではないか。

 
もちろん、これだけ登場するのには理由がある。
アメリカでは中華料理はピザなどと並んで出前やテイクアウト料理の代表格らしいのだが、そのお手軽さから「忙しい」や「わびしい」、「味気ない」、「独り身」といった人物描写やそうした雰囲気の表現として、劇中で使われることが多いのだ。
もう少し詳しく知りたいという方は、「テイクアウト中華_洋画」で調べてみるといい。

 
さて、その「テイクアウトの中華料理」であるが、本作「エターナル・サンシャイン」でも、そんな「味気なさ」の象徴として登場する。

 
ジョエルとクレメンタインは2人して「中華料理のテイクアウト」を食べながらも、その様子はどこかぎこちなく、暗い。
お世辞にも、会話が弾んでいるとは言えず、2人して、箱の中の中華料理を淡々とつついているといったところだ。

 

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

2人の間の関係の冷え込みを表現する上で、ここでも「中華料理のテイクアウト」がちょっとしたアクセントになっている。

 
ちなみに、この後、テイクアウトでなく、店内で中華料理を食べるシーンも登場するのだが、その際の2人のやりとりも、またぎこちない。
「また中華」といった発言もあり、2人のマンネリの象徴として印象的だ。

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(「エターナル・サンシャイン」本編より)

僕としては、「アメリカンテイストな中華料理」は、食べ方もあいまって、美味しそうに見えないこともないのだが、本作ではどこまでも不遇に感じられる中華料理なのであった。

 

(文/三田稔/ライター)

 

三松文庫出店情報@兵庫県伊丹市【鳴く虫と一箱古本市】

こんばんは、
三松文庫あかまつです。


突然なんですけど8月31日って残酷な日ですよね。9月に入ると夏はもう終わり。
海も、プールも、水着姿の美女も、すいかも、夏祭りも、花火大会も、浴衣姿の美女も、夏の出来事は全て幻想だったんだよと言わんばかりに現実に引き戻してきます。

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『大人の児童書目録 vol.2』【9月0日大冒険】

こんにちは。

あまりの暑さに、数年ぶりにバッサリ髪を切ってショートヘアになりました、たけはるです。

 

今日は8月最終日。

小学校などでは、夏休み最終日というところもあるのではないでしょうか。

今回は、そんな夏休み最終日に関する本のご紹介です。

 

 

今日で夏休みも終わり。と思いきや…

 

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今回ご紹介するのは、『9月0日大冒険』です。

 

 

このお話は、夏休み最終日である「8月31日」と

新学期が始まる「9月1日」の間、「9月0日」のお話です。

 

 

主人公は、小学4年生の純。

喘息持ちのためなかなか外で遊べずだったのですが、

今年の夏は旅行に、虫取りに、プールに、と楽しい夏休み!

 

…になるはずだったのですが、

突然の病気やお父さんの出張で予定が流れ、

結局、夏休みは満喫できないまま最終日、8月31日を迎えます。

 

「なんにも楽しくない夏休みだったなあ」と意気消沈して

8月最後の日めくりカレンダーをめくると…

そこにあったのは「9月0日」の日付。

 

驚くとともにふと窓を見ると、外は一面ジャングル。

あるはずのない「9月0日」が始まっていたのです。

 

そこから、クラスメイトのりこちゃんとアキラと出会い、

恐竜時代のジャングルを進んで行く、という冒険物語なのです。

 

 

これを初めて読んだのは、実は小学4年生の時。

 

 

そんなに文学少女というほど本を読んでいたわけでなかったので、

どんな本を読んでいたかあまり記憶にないのですが

何故かこの本はタイトルも話も覚えている、

ちょっと特別な本だったので、これを機に改めて読んでみました。

 

この本の特徴は、お話を盛り上げる挿絵が素晴らしくかっこいい所。

鉛筆だけのシンプルなデッサンなのですが、

荒々しさの残る力強さも中に、彼らの表情がわかる繊細さ、みたいなものがあって

そのリアリティさに創造力を駆り立てられます。

 

表紙のティラノサウルスなんて

本当にかっこいい。

 

中には見開きで挿絵のみのページもあって

ストーリーをさらに盛り上げています。

 

 

何気ない毎日を、おもしろく。

 

 

会社に出て、仕事をして、帰宅する、という何気ない毎日。

 

小学校の時も、学校に行って、勉強して、また帰る、という

大まかなサイクルは同じはずなのに、

すごく毎日が楽しかったような気がします。

 

今の仕事ももちろん楽しいんですけどね!(笑)

何も考えてなかったからなのかなあ、、

 

 

この「9月0日」のような非日常は起きないけれど、

もっと毎日を「おもしろく」過ごしたいものですね。

 

 

もう明日から9月。秋はすぐそこにまで来ています。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

次回もお楽しみに。

 

9月0日 大冒険 (偕成社文庫)

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(文/たけはる/某雑誌編集者1年目)

 

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